研究実績の概要 |
本研究の目的は、動画を利用した第二言語学習においてジェスチャーが果たす促進効果を、動画教材中の教師と受講者の両観点から検討することにある。本研究は、2023年度において、次の2点を実施した。 第一に、ジェスチャーの学習における有効性を検証するため、いかなる身体動作が、学習の根本となるワーキングメモリをより活性化するのかを検証した。これまでの先行研究は、身体運動がワーキングメモリや学習パフォーマンスを向上させる可能性を示唆しているが、ワーキングメモリに好影響を与える身体運動の種類は検討されていない(e.g., 喜屋武・高倉, 2019; Mullender-Wijnsma et al., 2015)。そこで本研究では、運動なしの安静(安静)、手の運動を行うタッピング(タッピング)、椅子に座った状態で上半身のみで行う運動(上半身運動)、全身運動と段差の昇降(ステッピング)という異なる種類の運動がワーキングメモリに及ぼす影響を、ワーキングメモリを測定するために広く使用されているリーディング・スパン・テスト(Reading Span Test: RST, 苧阪, 2002)を用いて検討した。その結果、本研究で検討した単純な身体運動ではワーキングメモリを促進する効果は認められなかった。この結果は、より複雑な身体運動、もしくは言語等の認知過程により密接に関連する自発的ジェスチャーがワーキングメモリの促進に貢献することを示唆する。 第二に、本研究では動画での教材作成を目標としており、その学習効果を検討するためのデータ測定方法として、視線計測の技法を採用する予定である。本研究では、動画の構図が視線と注意を誘導し、学習効果に与える可能性を検証するため、構図の効果を視線計測によって検証する実験課題を実施した。現在、そのデータを分析している段階にある。
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