研究課題/領域番号 |
22K02930
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研究機関 | 関西国際大学 |
研究代表者 |
章 志華 関西国際大学, 社会学部, 教授 (50310834)
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研究分担者 |
中嶌 康二 関西国際大学, 社会学部, 准教授 (10565823)
山本 敏幸 関西国際大学, 社会学部, 教授 (50367439)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | データサイエンス教育 / カリキュラムモデル / 数理・AI・データサイエンス / 文系大学の情報教育 / DSのカリキュラム開発 / 段階的洗練モデル / オンデマンド型DS教材 / MDASHリテラシー |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、文系私立大学におけるデータサイエンス(DS)教育のための体系的なカリキュラムモデルを構築することである。先駆的な実践大学での調査、学内学部横断の意見収集、海外のDS教育に関する文献研究を通じて、体系的なカリキュラムモデルを実装するための構成要素を抽出した。それに基づいて、体系的なカリキュラムモデルの概念設計、科目群の検討、学部横断的な実施を実験的に行っている。段階実績として、以下の論文を関連学会で発表した。 1)WCCE 2022 - IFIP TC3 World Conference on Computers in Education国際学会,Development of Education Curriculum in the Data Science Area for a Liberal Arts University。 DSの人材育成は、あらゆる側面で緊急の課題となっている。しかし、私立の文系大学は、これに対応するカリキュラムを十分に確立しているとは言い難い。本論文では、このような問題を認識し、課題解決のための概念的なカリキュラムモデルを提案した。このモデルは、私立文系大学を対象としており、DSの知識を体系的に組み込み、基礎数学やITスキルの弱点を補うように設計されている。カリキュラムの知識領域、DS教育コースの実施方法、DSと専門教育の融合に関する観点も論じた。 2)情報処理学会 第85回全国大会:文系私大生のDS教育におけるオンデマンド型授業の実践。 私立文系大学の学生の特徴を配慮し、DS教育プログラムのカリキュラム科目群は、知識やスキルが難易度より階層的に構成されている。本稿では、これら科目のうち、筆者が担当した「データサイエンス」科目のオンデマンド方式による教育の実践において、そのシラバス設計、コンテンツ作成、授業実施の状況および評価について報告する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題の進捗状況について、おおむね順調に進展していると評価できる。
まず、研究計画に定められた目標に対し、初年度では、先駆的実践大学での調査や学内学部横断の意見収集、海外DS教育に関する文献研究を行った。これにより、システマティックなカリキュラムモデルの構成要素を抽出することができた。さらに、文系生の基礎数学スキルの弱点を補完し、DSの知識モジュールを体系的に組み込むためのカリキュラム要素(Pyhonプログラミング×高校数学・機械学習のための数学などの知識モジュール)も抽出した。また、学部横断の導入も検討済みで、現在関連カリキュラムを策定して実験的に実施している。 段階的な成果として、関連学会において論文を発表した。国際学会では、DS人材育成の緊急性や私立文系大学におけるカリキュラム不足の問題を取り上げ、概念的なカリキュラムモデルの提案や基礎数学スキルの補完、DSの知識モジュールの組み込みなどについて報告した。本論文は厳しい審査基準に合格し、会議後の書籍に収録され、Springerが出版することとなった。国内学会では、私立文系大学の特徴を考慮したカリキュラム科目の階層的な構成や科目「データサイエンス」のオンデマンド方式による教育実践について報告し、シラバス設計、コンテンツ作成、授業実施の状況なども論じた。 これらの成果から、研究課題はおおむね順調に進展しており、提案されたカリキュラムモデルや教育実施方法に関する議論は、文系の学生に基礎数学スキルやDSの基礎知識を提供するために効果的なアプローチを探求する上で重要であった。今後、引き続きカリキュラム試案を基に、第2段階の目標に定められた学部横断的実施および関連の検証などに取り組む予定である。 総じて、研究課題の進捗状況は良好であり、DS教育のカリキュラム設計に関する提案や学会での発表など、着実な成果を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、文系私大のためのデータサイエンス人材育成ために、その教育プログラムに必要なの知識モジュールの抽出、階層的な科目群で構成されるシステマティックカリキュラムモデル(試案)を作成した。 しかし、まだいくつかの課題も残っている。知識領域の具体的なカリキュラム設計や、データサイエンスと専門教育を融合する方法などについて、さらなる検討が必要である。小規模な私立文系大学の教員が直面する制約や学内で限られた教育資源の問題も考慮しなければならないが、特に理想的なモデルを遂行することは難しいと考えている。対策として、一部の学科ではなく、現状の既存科目をうまく活用し、知識モジュールの見直しをすることで実施可能なカリキュラムを策定することを求められる。 これらを踏まえて、申請者が所属する関西国際大学を対象に、試案となるモデルを確実に実施可能な、文系大学生に適したデータサイエンスの科目群を確立するとともに、各科目のシラバスを固め、関連教材を開発する。さらに、知識モジュールを満たすコンテンツをLMSで利用できる形式の教材開発も一部視野に入れて進める。学部横断の実施に関しては、教育実施チームを結成し、文科省で進められるMDASHプログラムと連携し、全学的に実施する。そして、学内での実施結果を考察するために、履修者および科目担当者を対象にアンケート調査を通じて、システマティックカリキュラムモデルの評価と検証を行う。 今後の研究では、これらの課題に取り組む予定です。さらなる研究成果や教育実践の報告を通じて、私立文系大学におけるデータサイエンス教育の充実を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
1)関連学会の参加費や旅費が生じるため、翌年度分として利用する予定である。 2)研究遂行のために、支援ソフトウェアツールに利用する予定である。
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