研究課題/領域番号 |
22K02933
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研究機関 | 旭川工業高等専門学校 |
研究代表者 |
森川 一 旭川工業高等専門学校, システム制御情報工学科, 准教授 (20239635)
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研究分担者 |
三井 聡 旭川工業高等専門学校, システム制御情報工学科, 教授 (00219669)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | eラーニング / ICT活用 / 高等専門学校 / 高専MCC / 実験スキル / 電気・電子工学 / 遠隔実験 / 遠隔教育 |
研究実績の概要 |
本研究は,対面での電気・電子実験で獲得すべき実験スキルをオンライン実験でも獲得可能になる学習コンテンツを含むオンライン実験システム"eラボ"の開発を目的としている. 研究初年度は,コロナ禍による電子部品供給不足等の影響により,研究の中心となるサーバ,ワンボードPC等の中核機器の納品が年度末ぎりぎりになったため,当初予定したサーバ,ワンボードPCへのソフトウェアの導入・各種連携・データ移行が実施できなかった.このため,オンライン実験の回路設計及び実験指導書を含む学習コンテンツの作成を中心として対応を図った. 研究2年目には,ハードウェア類が前年度末に納品されたため,ハードウェアへのソフトウェアの導入を積極的に推し進めると共に,実験回路実装とワンボードPC及びサーバを接続した.これにより,構築したシステムの評価実験が可能な状態になった.研究倫理審査委員会に対して研究倫理申請をし,承認を受けた上で,所属学科の第4学年及び第5学年の学生14名の研究協力を得て,評価実験を実施した.その結果,遠隔実験の操作性,不具合,指導書,実験手順に関しては,全般的におおむね良好な評価が得られたが,実験スキル獲得の対面実験との同等性については,必ずしも十分な評価が得られなかった.このため,協力学生が対面実験との同等性確保に必要と感じている事項をアンケート回答から分析したところ,回路作成であると推察された.実験スキルとして「回路作成」が明示されている実験には,Web上でブレッドボードの配線やシミュレーションが可能なAUTODESK社製Tinkercadを導入予定であったが,それ以外の実験では,必ずしも回路作成が実験スキルとして求められていないため導入していなかった.対面実験では,回路作成は計測のために必要不可欠であるため,全ての遠隔実験にもTinkercadによる回路作成を導入するように修正した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
学習コンテンツの作成や実験回路の作成が進み,遠隔実験システムの基礎が構築された.動作確認終了した2セットが,運用可能な状況になった.このため,学内の研究倫理審査委員会での研究倫理承認を得て,2024年3月には,システム制御情報工学科5年生 8名(在籍学生数の23%)及びシステム制御情報工学科4年生6名(同21%)の協力により,構築した遠隔実験システムの評価実験を実施した.その結果,構築した遠隔実験システムでは,研究協力学生による実験操作でも,想定通りの遠隔計測が可能であることを確認した.また,アンケートの結果,構築したシステムの「操作性」,「不具合状況」,「指導書内容」,「実験手順」に関しては良好な評価を得られたが,対面実験で得られる実験スキルとの「同等性」に関しては,必ずしも良好な評価とはならなかった. 記述式アンケートの回答では,「オシロスコープの使い方や、回路の組み方など写真のみで確認するため、対面実験より、操作手順が身に染みていない気がした。」という比較的ネガティブな意見から,「配線一本一本に説明があって分かりやすかった」や「実際にブレッドボードや各種機器を用いての実験と比べると,理解度は多少劣るとは思いますが,この遠隔実験でも十分な理解は得られると思いました.あとは,実験をする学生のやる気と興味次第だと思います.」等のポジティブな意見まで得られた. なお,この遠隔実験で得られた実験スキル獲得状況を管理予定のポートフォリオシステムMaharaは,サーバへ未導入のため,LMSであるMoodleとの連携設定もまだ完了していない. また,2023年度途中までに得られたコンテンツ拡充等の成果の一部は,指導学生により「電気・電子系遠隔実験システムの学習コンテンツの拡充」の題目で発表し,電子情報通信学会北海道支部学生ブランチ顧問表彰(発表賞)を受賞できた.
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今後の研究の推進方策 |
2024年3月に実施した評価実験後の記述式アンケートでは,「対面実験では回路図を見て回路を組み立てたり,電流の調節などを行っていたが,遠隔では数字を打ち込むだけなので,対面実験と同等の知識は獲得できても技術を獲得できたとは言い難いと感じた.操作性などは問題ないように感じた.」や「対面実験の時より実験手順がわかりやすいため,考えることが少なく,手順通り進めるだけになってしまった.もう少し自分で考えさせる箇所があると良いと思う.」等の意見が示された. このようなアンケート結果を踏まえて,無料提供されているAUTODESK社のオンライン・ブレッドボード・シミュレータTinkercadの回路作成機能へのリンクを設定し,実験計測前に当該回路をTinkercadで作成する.この機能は,実験スキルとして回路作成が含まれている場合にのみ実施する予定であったが,対面実験では実験スキルとしての回路作成の有無にかかわらず,計測に先立ち回路作成が必要になるため,この機能を全実験に提供するように変更する. 2024年度当初では,遠隔実験システム2セットが稼働状態にあるが,さらに2セットを早期に稼働させ,合計4セットの遠隔実験システムを構築する.授業内実験の一環としての実証実験(最大8人の実験班を4人ずつの2グループに分けて,1つのグループのみに遠隔実験を適用し,対面実験との差異を確認する)をシステム制御情報工学科4・5年生,及び外国人インターンシップ学生の協力を得て実施する.このために必要な研究倫理審査を申請する.実証実験を通して,システムの有効性を高める改修を実施する. ポートフォリオシステムMaharaがサーバへ導入できておらず,この部分に関しては当初予定から大幅に遅れているが,2024年度中にサーバへのMaharaの導入とMoodleとの連携対応を図る予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度末に納品されたサーバのセッティングが全て完了していないこと,研究の遅滞により学会発表を次年度に変更したことにより,当初予算全額の執行ができずに,次年度使用額が発生した. 研究最終年度である2024年度には,次年度使用額を含めて交付決定額の全額を概ね執行する予定である.
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