研究課題/領域番号 |
22K02935
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研究機関 | 大島商船高等専門学校 |
研究代表者 |
久保田 崇 大島商船高等専門学校, 商船学科, 教授 (40413843)
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研究分担者 |
前畑 航平 大島商船高等専門学校, 商船学科, 講師 (10714850)
森脇 千春 大島商船高等専門学校, 商船学科, 講師 (90442467)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 針路保持 / 操船シミュレータ / 避航 / 商船教育 |
研究実績の概要 |
前研究で確立した航海者の避航を支援する避航行動指標は、安全指標の側面でしかなく、もう一つの重要な安全行動である針路保持行動を加味した避航行動指標を確立する必要がある。本研究では、航海者の針路保持行動指標(Track Keeping Index)を提案し、避航行動指標と組み合わせた航海者の安全行動を総合的に支援するシステムを構築することを目的とした。そして令和4年度は、航海者の針路保持指標をなる主観確率モデル(Subjective Probability of Track Keeping:以下SPOTK)を構築した。自船がコースラインからd(マイル)外れて航行している場面で、コースライン(航海者が海上で安全航行する為に決定する針路線)を中央に航海者が安全だと設定する航路幅(航海者が決定するコースラインからの逸脱限界幅)を2Rとした場合に、航海者は定期的に自船の位置を確認しコースラインからの偏位dが生じ、コースラインに乗るような針路を取り直し、調整しているとする。この調整は航海者の経験による主観的な判断であり、偏位に対する許容幅Rと航海者の針路保持行動の判断基準は航路幅Rとコースライン(偏位0マイル)間の距離で変化する主観確率モデル(Subjective Probability of Track Keeping:SPOTK)で表されると考えた。モデル内の定数Aはスロープを決定し、この傾きは航海者の乗船経験(船の大きさ、航行海域、乗船年数など)により変わることを示した。しかし、本モデルや定義は著者らの構想に留まっていたため、本モデルの妥当性を検証するためのヒアリング調査を実施した。前研究被験者を含む内航航海士、20名に本モデルの妥当性を問い、概ね当てはまることが分かった。また同時に針路保持に関する主観的な基準調査も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒアリング調査内で、針路保持の安全基準を問う内容(航路内でのコース逸脱距離に対する限界距離)を行い、その聞き取り結果より、被験者に対する本モデルの検証実験シナリオの初期設定などの構想が出来た。しかし実験方法については、従来どおり操船シミュレーター映像を使用するかなど、考えが纏まらなくなった。理由は、そのヒアリング調査でヒアリング対象者に実験状況を説明する際、映像よりも文章や平面図で説明したほうが、その状況が伝達し易い場面が観察できたからである。しかしながら本年度前半には実験方法を決定し、実験の実施を早期実現しなければならない。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度については、構築したSPOTKモデルを検証する実験を実施する。SPOTKモデルが確立できれば針路保持指標(Subjective Probability of Track keeping Index:SPOTI)を決めることができる。SPOTIについて説明すると、コースラインからの偏位dに対して、コースライン中心に船舶を復帰させるため目標をリカバリーポイントと設定し、そのリカバリーポイントに向けるための限界距離D及び修正角θが針路保持指標の変数となると考えている。その変数を被験者別(乗船年数別や船種別など)に求めるための検証実験についても作成し、実施したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験用のPCソフトウェアを令和4年度に購入予定であったが、実験方法の操船環境の表現について、映像にするかどうかについて考えが纏まらず、購入できなかったためである。そのため令和5年度にソフトウェアを吟味し、購入予定である。また人件費について令和4年度は解析作業の学生補助が発生しなかった(相応しい学生がいなかった)が令和5年度は学生補助を迎える。
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