研究課題/領域番号 |
22K02959
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松山 桃世 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (90425645)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 科学コミュニケーション / 総合知 / 異分野融合 / ELSI / 手法開発 / カードゲーム / ワークショップ / 新興技術 |
研究実績の概要 |
第6期科学技術・イノベーション基本計画に記されるように、社会の諸課題へ的確に対応し、イノベーションを加速するために、あらゆる分野の知を総合的に活用する「総合知」が求められている。研究や技術開発現場への多様な価値観や見方のインプットの重要性も指摘され、異分野連携や文理融合を促進する場の構築や、ユーザー視点で課題の解決法を探る手法の開発が進められている。本研究では、市民の知に焦点を当て、工学研究者と市民が対話を重ねることで知を共創し、研究現場に新視点をもたらす手法(ツールおよびワークショップ)を開発することを目的とする。 2022年度は、ツールのプロトタイプである「ひみつの研究道具箱カード」(参考:http://cardgame.iis.u-tokyo.ac.jp/)を用いたワークショップを、多様な対象(小中学生、高校生、理系の大学院生、人文社会系の大学院生および専門家、理科担当の中学校教員、親子など)に対して実施し、改良を進めた。本ツールのカードには幅広い萌芽的な技術が紹介されており、参加者はそれらを組み合わせて社会課題の解決法を探る。アンケート調査から、幅広い対象が本活動に興味を示すことが判明した。人文社会系の専門家や科学技術に関心の低い層も巻き込むことで、工学研究の現場が把握していない視点を得られることが期待される。また、ワークを追加することで、技術の新用途や分野融合のアイデアだけでなく、社会実装に際してのELSI(倫理的、法的、社会的課題群)も回収できる可能性が見えてきた。加えて、より具体的なアイデア創出を支援するために、各技術の専門家およそ40名に取材を重ね、解説記事をウェブサイトに公開し(http://cardgame.iis.u-tokyo.ac.jp/card_type/)、カード上の情報を大幅に補足した。教育機関を主対象に、プロトタイプ版の貸出も開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イノベーションを加速する「市民の知」の定義づけには苦戦しているものの、多様な対象に対してワークショップを重ね、ワークシートやアンケートの分析結果をもとに、新たなルールやワークを追加して改良を進めている。加えて、新たなツールとして、萌芽的技術の解説ウェブサイトを制作するなど、手法開発は順調に進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
イノベーションを加速する「市民の知」の定義づけを目指し、ワークショップで得られたアウトプットを整理し、研究現場と議論を重ねる。 技術の新用途や異分野融合案、ELSIなど、回収すべき知に応じたワークショップの改良を進める。 各地の研究機関が独自のカードを制作し、地元の科学館と連携してワークショップを実施しやすいよう、カード制作のワークショップの開発やマニュアルの整備を進める。
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備考 |
本研究で開発を進める科学コミュニケーションツール「ひみつの研究道具箱カード」の紹介および体験ウェブサイト。2022年度には、40種類ほどの萌芽的な技術それぞれについて解説するwebページを追加公開した。
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