研究課題/領域番号 |
22K02984
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研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
長 昌史 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (50332721)
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研究分担者 |
中村 洋 京都大学, 工学研究科, 教授 (90243162)
井田 大地 京都大学, 工学研究科, 准教授 (80610518)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 高分子化学 / 機能性高分子化合物 / 高校化学 / 化学教育 / 化学教材 / 吸水性ポリマー / イオン交換樹脂 / d-リモネン |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,高校化学で機能性高分子化合物の教育・実習に利用できる新しい実験教材を探究し,教材についての理解を深化させ,機能性高分子化合物に関する新しく魅力的な実験教材の開発を行うことである。具体的な機能性高分子化合物の教材として,「吸水性ポリマー」「イオン交換樹脂」「刺激応答性ゲル」「生分解性高分子」等を予定している。これ以外にも,高分子化学教育に利用できる実験教材が見つかれば,その探究・深化に取り組んでいく。 令和5年度においては,吸水性ポリマーの吸水性についての更なる探究,イオン交換樹脂の合成方法の確立を目指した研究、およびオレンジオイルが発泡スチロールを溶解する現象についての探究を行った。 吸水性ポリマーに関して,カチオン性の置換基を持った高分子で構成された吸水性ポリマーの合成方法を確立し,その吸水性について探究した。カチオン性置換基を持った吸水性ポリマーの吸水率は,アニオン性置換基を持った吸水性ポリマーの場合と比べ,吸水する水溶液に含まれるイオン種による影響が大きく異なることを明らかにした。この結果に基づき,高分子化合物の構造と機能性の関係を理解するための化学実験教材としての利用が期待できる。 イオン交換樹脂に関しては,スルホ基を持つ4-ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウムを重合し架橋することで陽イオン交換樹脂の合成を,第4級アンモニウム基を持つ(ビニルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリドを重合し架橋することで陰イオン交換樹脂の合成を試みた。このように合成したイオン交換樹脂はいずれも,イオン交換能を持つことが確認できた。イオン交換樹脂の合成および物性に関して,今後も研究を継続していく。 オレンジオイルに含まれる成分であるd-リモネンが,発泡スチロールの構成成分であるポリスチレンを溶解する能力について探究し,その研究成果について学会発表および論文発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カチオン性置換基を持った吸水性ポリマーの合成方法を確立し,その吸水特性を明らかにした。この結果に基づいて,吸水性ポリマーの化学実験教材としての理解の深化および普及をさらに推進していく段階に来ている。 陽および陰イオン交換樹脂を合成し,いずれもイオン交換能を持つことが確認できた。これらのイオン交換樹脂の化学実験教材としての利用方法を確立する段階に来ている。 従来から化学教材実験として利用されてきた,発泡スチロールのオレンジオイルへの溶解実験について,ポリスチレンのd-リモネンに対する溶解性を定量的に評価する方法を確立し,その成果を論文として公表した。
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今後の研究の推進方策 |
吸水性ポリマーの化学教材としての利用方法の確立,イオン交換樹脂の合成と化学教材としての利用方法の確立を推進していく。その他の機能性高分子化合物の化学実験教材に関しても,今後,研究を推進していく。 また、当初の研究対象にあげた機能性高分子化合物以外にも、化学教材として利用可能な対象を見つけ、その調査・研究も推進していく。オレンジオイルを用いた化学教材実験に関しては,ゴム風船にオレンジオイルを掛けるとゴム風船が割れる現象についての探究に着手する予定である。
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