研究課題/領域番号 |
22K02988
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研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
有泉 高史 玉川大学, 農学部, 教授 (30286166)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 動物の発生 / デジタル教材 / アナログ教材 / 3D画像処理 / 3Dプリンタ / ICT活用 |
研究実績の概要 |
高校『生物』で扱う「動物の発生」は、卵から親への体づくりの仕組みを学ぶとともに、再生医療の技術や課題を理解する上でも重要な単元である。しかしながら、受精卵や初期胚の調達は容易ではなく、観察する時間の制約も受けるため、実際の学校現場で観察や実験を行うことが難しい単元でもある。従来は写真や映像、粘土や木製の模型などが教材として用いられてきたが、生徒の興味・関心を引き付けて探求的に学ばせるには限界があった。 本研究課題では3D画像処理技術と3Dプリンタ出力を用い、「動物の発生」に関するデジタル・アナログ補完型教材を開発する。さらに、ICTを通じてこれらの教材を実践的に活用することを目的としている。3年間の研究期間内に、①デジタル教材の作成、②アナログ教材の作製、③デジタル教材とアナログ教材の補完活用による生徒の探究的学習の支援、④膨大な数のデジタル画像のデータベース化によるICT活用教育の加速、の4つの課題に取り組む。 令和4年度は上記①デジタル教材の作成と②アナログ教材の作製に必要な画像データの収集に取り組んだ。初めに両生類(ヒキガエル・アカハライモリ)のさまざまな発生段階にある胚を調達し、各種の胚の連続切片を作製した。続いて連続切片を撮影して得られた数千枚以上のデジタル写真をデータベース化した。最後にCTやMRIに用いる医用画像処理ソフトを用いてデジタル画像の処理と編集を行い、3Dモデル作成と3Dプリンタ出力に必要な画像データを収集した。本年度に得られた連続切片の画像データは、次年度に取り組む高精細3Dモデル〔デジタル教材〕と光造形立体模型〔アナログ教材〕を完成させるために利用する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は高精細3Dモデルの作成、ならびに3Dプリンタ出力による光造形立体模型の作製に必要なデジタル画像データを収集してデータベース化することを目標とした。初めに神奈川県内および山形県内で採集した両生類(ヒキガエル・アカハライモリ)を実験室で産卵させ、受精卵から孵化後の幼生に至るまでの各発生段階の胚を調達した。それぞれの胚をブアン氏液で固定してからパラフィンに包埋し、厚さ10μmの連続切片標本(ヘマトキシリン-エオシン染色)を作製した。連続したすべての切片を顕微鏡に取り付けたデジタル一眼レフカメラで撮影してデジタル画像データを収集した。最後に、CTやMRIに用いる医用画像処理ソフトを用いてデジタル画像の処理と編集を行い、3Dモデル作成と3Dプリンタ出力に必要な画像データベースを完成させた。 以上は研究実施計画に掲げた令和4年度の【作業課題】と【到達目標】の内容を満たすものであり、本年度に実施した研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度はこれまでに収集したデジタル画像データをもとに高精細3Dモデル〔デジタル教材〕と光造形立体模型〔アナログ教材〕を完成させる。これらのデジタル・アナログ教材を補完的に活用すれば生徒にとって魅力的な教材となり、「動物の発生」についての深い学びに繋がることが期待できる。また、教師にとっても、実物の卵や胚を使った観察や実験と同等以上に発生の仕組みを詳しく魅力的に伝えられる教材となることが期待できる。 3Dモデルについては、フリーソフトウェアのImageJを利用した“簡易版3Dモデル”を作成して授業で活用してきた。生徒の興味・関心を十分に引くことは実証できたが、両生類の初期胚の内部構造の詳細な観察には至っていない。令和5年度はCTやMRIに用いる医用画像処理ソフトを駆使し、高精細な3Dモデル〔デジタル教材〕を完成させて生徒の探求的な学びに役立てることを目標に研究を進めていく。 一方、これまでは3Dプリンタを所有していなかったため、両生類胚の立体模型の作製には至らなかった。それに代わる教材として、卵や胚を透明な樹脂に埋め込んだ標本を作製して内部構造の観察を行ってきた。実物を観察できるメリットはあるが、細部の観察には実物を数百倍に拡大した光造形立体模型が有用である。昨年度の研究によって3Dプリンタ出力に必要な画像データを収集したので、令和5年度は光造形式3Dプリンタを購入して卵や胚の光造形立体模型〔アナログ教材〕の完成を目指す。
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