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2022 年度 実施状況報告書

個別最適な学びと協働的な学びを一体的に支援する理科授業デザインと教員養成への波及

研究課題

研究課題/領域番号 22K03003
研究機関広島大学

研究代表者

網本 貴一  広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (60294873)

研究分担者 吉冨 健一  広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (00437576)
片山 豪  高崎健康福祉大学, 人間発達学部, 教授 (60635754)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード教材開発 / ICT活用 / 個別最適な学び / 協働的な学び / 教員養成
研究実績の概要

[化学分野] 網本は、高等学校理科(化学)を中心に、文脈に基づく科学探究を通じて生徒に確かな理科の学力を修得させるとともに、HSW((How Science Works?)やNOS(Nature of Science:科学の本質)を生徒に意識させる化学教材と学習プログラムの開発を進めた。具体的には、クロム(Ⅵ)イオンの状態分析と化学平衡,有機分子の立体配座と配座変換のエネルギー図、代謝の速度論と阻害に関する教材をそれぞれ新規に開発し、大学教員養成課程での授業実践を通じてその有効性を明らかにした。
[生物分野] 片山は、高等学校理科(生物)を中心に、個別最適な学びと協働的な学びを可能とする新規生物教材の開発や従来の教材の指導方法の確認を行った。特に新規教材に関しては、指導の個性化を確立させ、かつ安定した結果が得られるような最適条件を検討した。今までに検討済み、または従来の実験教材に関しては、試行的に学習の個別化の成立を検証する講座を行った。セントラルドグマを確認する無細胞タンパク質合成系の実験キットに関しては、実際に高校生に基本操作を習得した後,自ら立てた仮説を検証するための実験を計画し、実験を実施した。そして、その結果から考察し、結論を発表するなどの探究の過程を実践することができた。
[地学分野] 吉冨は、高等学校理科(地学)で行われる野外実習や野外調査において、地層の層理面や火成岩の節理面の走向傾斜を数多く計測した場合に,生徒が取得したデータを自ら集計することで、データの傾向を容易にかつ客観的に評価できるようなWebアプリケーションの開発を行った。具体的には、文部科学省が進めているGIGAスクール構想により学校現場で様々なOSの端末が使われていることに対応するため、OSやプラットフォームによらずWebブラウザを用いて野外調査の結果を集計し、ローズダイアグラムを作成し表示する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

申請時の計画通り、今年度は教材開発と授業デザインを中心に基礎研究を進め、その成果を学会発表17件、論文公表2件として公表することができた。実験やICTを援用した学習プログラム開発とその実践・評価に向けて、次年度以降の基盤を形成できたと考えている。
一方で、コロナ禍対応で教育実践の場が大きく制限されたことで、研究課題に掲げた「個別最適な学びと協働的な学び」を念頭に置いた理科授業デザインの構成とその実践・普及は、次年度以降の課題となっているが、連携校との教育実践の機会の調整が徐々に始まりつつあり、今後の研究進展が期待される状況である。
これらの兼ね合いで、現在までの進捗状況を「おおむね順調に進展している」と評価した。

今後の研究の推進方策

網本は、How Science Works?やNature of Scienceの視点で探究できる教材開発を継続させるとともに、これまでに開発してきた化学教材を個別最適な学びと協働的な学びの両方の視点から高等学校現場で実用的に取り入れることのできる学習プログラムへの再構成を試みる。また、個人レベルの理解度を教師が見取りながらクラス全体の協調的な学びに繋げる授業を実現するためのインターフェースを大学教員養成課程の中に整備し、ICT活用による理科授業の設計や改善の効果を検討する。
片山は、初年度と同様に個別最適な学びと協働的な学びを可能とする新規生物教材の開発や従来の教材の指導方法の確認を行う。初年度においてはICTの活用は、データの共有やディスカッション、発表原稿の共同作業などの協働的な学びにおけるツールでしかなかったので、個別最適な学びを促進させるような活用法を検討する。有用性のある教材は、教育現場で実践を行い、指導と評価の一体化につながるような評価方法も検討する。最終年度でまとめる指導資料の作成のために多くの教材と実践の事例を行っていく予定である。
吉冨は、GIGAスクール構想やリモート授業、社会全体のデジタル化などの社会的要請を踏まえ、中学校あるいは高等学校理科(地学)において活用できるICTを活用した教材の開発を継続して行う。特に第二分野や地学分野においては、実物を観察することが重視されているにもかかわらず、安全管理面や責任の所在などの理由で教員が生徒を引率して実際に野外に出ることは極めて難しい状況となっている。そこで実物の観察に換えることのできるような自然事象の形や変化を捉えた教材を作成することで、ただ見て終わるのではなく、そこから疑問を見いだし、学習につなげることのできる教材開発を行う。

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額が生じた理由として、コロナ禍対応で教育実践の機会が制限されたことで物品費(消耗品費)の支出が抑えられたことと、成果発表のための学会でオンライン開催となったものがあり国内旅費の支出も減じられたことの2点が挙げられる。
今後の使用計画について、今年度は教育実践の機会が増えてくることが予想されるので、そのための物品費(消耗品費)や人件費・謝金に充てる予定である。

備考

・(受賞)片山が、56th Biology Teachers Association of the Philippines National Convention and Scientific Sessions & 28th Biennial Conference of the Asian Association for Biology Educationで、Best Posterを受賞した。

  • 研究成果

    (21件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (17件) (うち招待講演 1件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] 太陽炉を利用したカーバイドの合成とその教材化2022

    • 著者名/発表者名
      植田 和利、伊東 和彦、上原 誠一郎、網本 貴一
    • 雑誌名

      科学教育研究

      巻: 46 ページ: 59~68

    • DOI

      10.14935/jssej.46.59

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 方向データを手軽に扱えるローズダイアグラム作成Webアプリ2022

    • 著者名/発表者名
      吉冨 健一
    • 雑誌名

      地学教育

      巻: 75 ページ: 67~72

    • DOI

      10.18904/chigakukyoiku.75.2_67

    • 査読あり
  • [学会発表] 酵母が行う代謝に関する酵素反応速度論を探究させる高等学校生物-化学の科目横断型実験教材2023

    • 著者名/発表者名
      網本貴一、西口博光、片山豪
    • 学会等名
      日本生物教育学会第107回全国大会
  • [学会発表] UVスペクトルとコンピュータ活用によって二クロム酸イオンとクロム酸イオンが関与する化学平衡にアプローチする化学教材2023

    • 著者名/発表者名
      須佐悠仁、網本貴一
    • 学会等名
      日本化学会第103春季年会(2023)
  • [学会発表] 分子模型とコンピュータ演習を援用してシクロヘキサン類の配座異性を捉える学習プログラムの開発2023

    • 著者名/発表者名
      廣田倫太郎、網本貴一
    • 学会等名
      日本化学会第103春季年会(2023)
  • [学会発表] アミノ酸測定キットを用いた探究活動教材の開発 -ブロッコリーに含まれる遊離グルタミン酸,グルタミンの測定-2023

    • 著者名/発表者名
      片山 豪、吉野 真衣、森下 雄太、田中 進
    • 学会等名
      日本理科教育学会第72回全国大会(旭川大会)
  • [学会発表] 小学校第5学年「種子の発芽,成長,結実」におけるコムギの活用に関する基礎的研究2023

    • 著者名/発表者名
      松村明紀、片山 豪
    • 学会等名
      日本生物教育学会第107回全国大会
  • [学会発表] 「教員のための夏休み理科教室」を介した「理数探究」の支援の試み(1)2023

    • 著者名/発表者名
      岩室祥一、片山豪
    • 学会等名
      日本生物教育学会第107回全国大会
  • [学会発表] アミノ酸測定キットを用いた探究活動教材のための基礎的研究-ブロッコリーに含まれる遊離グルタミン酸,グルタミンの測定-2023

    • 著者名/発表者名
      吉野真衣、森下雄太、田中 進、片山 豪
    • 学会等名
      日本生物教育学会第107回全国大会
  • [学会発表] セントラルドグマに関する探究的な実験の個別最適化に関する基礎的研究2023

    • 著者名/発表者名
      羽鳥綾真、田邉大政、林秀則、飯野道彦、片山 豪
    • 学会等名
      日本生物教育学会第107回全国大会
  • [学会発表] 蛍光顕微鏡を用いない細胞骨格の観察法の研究Ⅴ -カイコの血球細胞とカエルの腎臓の培養細胞を用いた細胞骨格の観察-2023

    • 著者名/発表者名
      片山 豪、野崎真史、田中 進、日野瑞城
    • 学会等名
      日本生物教育学会第107回全国大会
  • [学会発表] ABO式血液型をPCR法で簡便に判定できる実験教材の開発2023

    • 著者名/発表者名
      岡本健吾、片山 豪
    • 学会等名
      日本生物教育学会第107回全国大会
  • [学会発表] 「高校生物教育で育てる資質・能力と大学入学選抜 の評価指標と方向性」 生物用語と入試問題2023

    • 著者名/発表者名
      片山 豪
    • 学会等名
      日本生物教育学会第107回全国大会
  • [学会発表] 遠隔からの自宅実験を組み合わせた高校生の探究活動への指導実践2022

    • 著者名/発表者名
      網本貴一
    • 学会等名
      日本理科教育学会第72回全国大会(旭川大会)
  • [学会発表] イサチンヒドラゾン類の幾何異性に基づく結晶多形と光物性2022

    • 著者名/発表者名
      網本 貴一、廣田 倫太郎、須佐 悠仁
    • 学会等名
      第30回有機結晶シンポジウム
  • [学会発表] 有機化学の構造を理解させる教具としての 計算化学の可能性に関する基礎的検討2022

    • 著者名/発表者名
      廣田倫太郎、網本貴一
    • 学会等名
      2022年日本化学会中国四国支部大会(広島大会)
  • [学会発表] 紫外可視分光法によりクロム(VI)の化学平衡を取り扱う実験教材への基礎的検討2022

    • 著者名/発表者名
      須佐悠仁、網本貴一
    • 学会等名
      2022年日本化学会中国四国支部大会(広島大会)
  • [学会発表] 意欲ある高校生の学びと探究活動を支援するプログラム開発:広島での取り組みを例にして2022

    • 著者名/発表者名
      網本貴一
    • 学会等名
      これからの理科の先生をどう発掘し支えるか?inふくしま
    • 招待講演
  • [学会発表] Study on observation method of cytoskeleton by microscope in high school2022

    • 著者名/発表者名
      Takeshi Katayama, Masahito Nozaki, Susumu Tanaka, Mizuki Hino
    • 学会等名
      56th Biology Teachers Association of the Philippines National Convention and Scientific Sessions & 28th Biennial Conference of the Asian Association for Biology Education
  • [備考] ・ローズダイアグラムの作成(吉冨作成のWebアプリ)

    • URL

      http://1604-016.a.hiroshima-u.ac.jp/rose_diagram/index.html

  • [備考] ・理科の先生(網本の学習プログラム開発の一部が掲載されています)

    • URL

      https://rikanosensei.net/

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公開日: 2023-12-25  

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