研究課題/領域番号 |
22K03007
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研究機関 | 札幌市立大学 |
研究代表者 |
若林 尚樹 札幌市立大学, デザイン学部, 教授 (40254586)
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研究分担者 |
政倉 祐子 愛知淑徳大学, 創造表現学部, 准教授 (60468915)
田邉 里奈 千葉工業大学, 先進工学部, 准教授 (50386786)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 工作 / 教材 / 体験 / 形態 / 配置 / 機構 |
研究実績の概要 |
本研究では自ら工作することでその特徴や仕組みを体験的に学ぶことのできる工作キットを1)形の特徴のモデル化、2)組み合わせのモデル化、3)仕組みのモデル化の3つのタイプに類型化し、実証実験を通して抽出し、それらの活用を推進することを目的とする。 2022年度は形の特徴のモデル化をテーマに、1)生物の全身形態、2)動物の顔、3)小学校の校舎をそれぞれテーマにした工作キットを開発し、それらの工作キットを活用したワークショップを実施した。それぞれのワークショップの傾向をと耐えるために、主観的印象評価手法である気持温度計を用いて、高揚感、達成感、難易度についての参加者の印象をプログラムの工程の進行にそって評定してもらい、その分析からそれぞれの傾向をヒック検証することができた。 1)生物の全身形状を対象にした工作キットは、沖縄美ら海水族館の協力を得て、イルカとサメの生物学的な特徴とそれぞれの違いをテーマにしたペーパーモデルの開発を行ない、水族館職員を対象とした試行実験をおこなった。その結果得られた課題点の改善を行い2023年11月に実施予定のワークショップの準備を行なう予定である。2)物の顔をテーマにした工作キットは、円山動物園で2種類のワークショップを計画し、工作キットの教材を開発し、それを活用したワークショップを実施した。ワークショップは、ゾウ舎で展示されているアジアゾウをテーマにしたものと、こども動物園で展示されているモルモットをテーマにしたものの2種類のワークショップを行なった。3)小学校の校舎をテーマにした工作キットでは、小学校の総合学習における工作キットを用いた授業を試験的に実施し、授業テーマにそった工作キットのより効果的な活用について分析を行う。これらの体験プログラムで得られた記録データやインタビュー記録の詳細な分析を行い、その特徴的な傾向を抽出することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
体験プログラムの実施に積極的に取り組む水族館や動物園、および小学校の協力を得て、それぞれの課題設定にもとづいた実証実験を実施した。沖縄美ら海水族館では、同館の教育普及担当者等とともにサメとイルカの実物大のダンボール工作キットの試作とその検証実験を実施した。この取り組みではサメとイルカの生物学的な視点からの形態の特徴を捉え、それを工作キットでいかに表現するかの検討を行った。それらの成果をもとに、2023年秋に沖縄の児童館等で子どもたちを対象とした実証実験を行予定である。 円山動物園での動物の形態をテーマに動物の顔の工作キットを設計し、それらを用いた実証実験を行なった。動物の顔の工作キットは、動物園の展示飼育担当者のアドバイスをもとに草食系動物と肉食系動物の2種類のタイプの特徴を類型化し、それをもとに複数の動物の顔の工作キットを設計し、それらを活用したワークショップを実施し、参加者の反応について主観的印象評価等の手法で調査分析を行ない、その成果は2023年6月に開催される日本デザイン学会で報告の予定である。 小学校の総合学習における工作キットを用いた授業を試験的に実施し、授業テーマにそった工作キットのより効果的な活用について分析を行った。札幌市内の小学校2校の協力を得てそれぞれの校舎の特徴的な形態をモデル化した工作キットを設計した。担当教諭らとともに小学校4年生を対象とした総合学習の時間での工作キットを用いた授業設計を行った。授業では、図画工作とともに算数の直方体の展開図の単元との科目横断としての授業内容とした。気持温度計による、生徒らの主観的な印象の変化の評価と、振り返りシートによるキーワード分析を行い、その成果はこども環境学会の査読論文として採択され2023年8月に発行される学会誌で掲載される予定である。 以上のように2022年度は当初の計画通りに実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
ワークショップや体験プログラムなどでのそれぞれのプログラムの目的やテーマに応じた工作キットを、3タイプに類型化したモデル化の手法を用いて設計する。それらの工作キットを用いた実証実験を展示施設や小学校などの協力を得て実施する。実証実験では主観的印象評価とアンケートなどによるデータ収集を行い、得られたデータや知見を分析し、モデル化した体験プログラムのプロセスの中でタイプごとの工作キットの題材やテーマとの関係や位置付けを明らかにする。それをもとにそれぞれのタイプでの工作キットの設計要件を抽出しそれらの構成要素を明らかにする。 これまでのそれぞれの課題での実証実験を継続しながら3タイプに類型化したモデル化の手法を活用し、展示施設での体験プログラムや小学校での総合学習の授業などで実証実験を重ねる。そこから得られた主観的印象評価のデータやアンケートから得られた知見を分析し、モデル化した体験プログラムのプロセスの中でタイプごとの工作キットの題材やテーマとの関係や位置付けを検証する。それをもとに題材やテーマをより深く理解し、参加者が主体的にテーマに取り組むきっかけとなる工作キットの設計要件の抽出を目標とする。本研究において得られた結果をもとにガイドラインを策定し、今後さまざまなタイプの体験プログラムでの支援につながる基盤的位置づけとなる提案を行う。さらに他の分野での体験プログラムの実証実験へと展開し、体験プログラム、ワークショップの手法としての汎用化を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度は新型コロナウイルス感染症対策の観点から、当初予定していたワークショップや実証実験を延期したこと、学会発表がオンラインになったこと等により、実験に関連する費用や旅費の執行額が大幅に少なくなった。また、それに伴いいくつかの実証実験の予定が次年度に持ち越しとなったことから、作成にかかる謝金等の支出も執行されなかった。 2023年度は実験や学会発表等が従来通り対面での実施が可能となると考えられること、これまでの実験を通して実験データの収集分析、およびノウハウ抽出が進み、ワークショップや実証実験の計画に即した執行を目指す。 ■使用計画:2023年度は新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行に伴い、動物園や水族館での当初予定していたワークショップや実証実験が実施できると見込まれる。また、2023年6月に開催予定の日本デザイン学会が対面実施となったことから、予定通りの旅費支出が見込まれる。
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