研究課題/領域番号 |
22K03018
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
辻本 昌弘 東北大学, 文学研究科, 教授 (90347972)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 抵抗 / 集合行動 / 事例研究 / 歴史社会心理学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,非人道的行為をおこなう権力者への間接的抵抗を解明することである。間接的抵抗とは,処罰を被らないかたちで権力者の非人道的行為を骨抜きにする行動である。 本年度は,間接的抵抗にかんする研究成果をまとめた学術論文「間接的抵抗について」を社会心理学研究誌で刊行した。この学術論文の概要は以下のとおりである。とりあげたのは,ナチ支配下における民衆の事例、戦前日本における徴兵忌避の事例、戦場で面従腹背行動をとった兵士の事例などである。これらの事例を手がかりにして,直接的抵抗と対照をなす間接的抵抗の特徴を明らかにした。また,間接的抵抗の打撃力・集合行動の機制・情報の非対称性,直接的抵抗と間接的抵抗の補完関係といった観点から理論的・実践的な考察をおこない,間接的抵抗の諸相を明らかにした。 以上の研究では歴史的な史料を活用したことから,社会心理学における史料活用の利点と限界,史料活用と理論的分析との関係などについて,さらに検討をおこなった。その成果の一部を,東北心理学会第76回大会において発表した。 また,間接的抵抗についての事例研究を進めるなかで,事例研究法における事例選択のあり方について,新たな着想を得た。事例研究法をめぐるこれまでの知見や論争を洗い直し,着想を明確な方法論として結実させる研究を遂行した。その成果の一部を,日本グループ・ダイナミックス学会第69回大会において発表した。方法論にかんする一連の研究成果を学術論文にまとめる作業に入った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2023年度に予定していた研究をすべて完遂することができた。間接的抵抗についての研究成果を学術論文として刊行することができた。方法論にかんする知見を2つの国内学会大会において発表することができた。事例研究の方法論にかんする知見を学術論文にまとめる段階にまで到達することができた。
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今後の研究の推進方策 |
事例研究の方法論にかんする研究成果を学術論文として刊行することを目指す。抵抗行動および抵抗思想において「死」の観念がいかなる役割をはたしているのか,分析を深める作業に着手する。
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