研究課題/領域番号 |
22K03028
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
加藤 潤三 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (30388649)
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研究分担者 |
前村 奈央佳 神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (50632238)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | コロナ禍移住 / 新型コロナウイルス感染症 / 地方移住 / 適応 / 受容 |
研究実績の概要 |
新型コロナウイルス感染症は、個人のライフスタイルや価値観を変容させるとともに、急速に進展したオンライン化は職住分離を可能とする社会環境を生み出した。これに伴い、都市部の住民を中心に、地方移住に対する関心がさらに高まっていることが様々な調査によって明らかにされている。本研究では、新型コロナウイルスをきっかけとする地方移住を『コロナ禍移住』と定義し、コロナ禍移住者の移住決定と適応プロセスを検討することを研究目的の1つとした。 この研究目的を検証するために、2020年1月以降に新型コロナウイルスをきっかけとして地方へ移住したコロナ禍移住者を対象とするWeb調査を実施した。なおコロナ禍移住者の特徴をより明確にするために、同期間に地方移住した移住者(新型コロナを契機としない)を対照群として設定した。調査ではコロナ禍移住者307名、対照群118名から回答を得た。 コロナ禍移住者が移住を決定した理由(自由記述)について、テキストマイニングによる分析を行ったところ、頻出語として「新型コロナウイルス」、「仕事」、「リモートワーク」、「生活」、「不安」、「リスク」、「家族」、「人混み」などの語が抽出された。 次にコロナ禍移住者と対照群で比較を行ったところ、移住後の適応度については両者で相違は認められなかったが、居住地選択においては、コロナ禍移住者は地域の住みやすさ(住環境、治安、医療など)やソフトパワー(人間関係、伝統文化、教育など)をより重視する傾向があった。また新型コロナウイルスに対するリスク認知について、コロナ禍移住者と対照群でその高さに相違はなかったものの、コロナ禍移住者ではリスク認知と適応度の間に有意な正の相関が認められた。つまりリスク認知が高いほど適応度が高くなるのである。このことはコロナ禍移住者にとって、地方移住がリスクやそれに伴う不安を低減させる手段となっていることを示すものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究のメインとなるコロナ禍移住者を対象とする調査を実施することができた。極めて出現率が低いサンプルであったが、300名以上と一定規模のデータ数を確保することができた。 今後さらなる分析を進め、学会発表および学術論文の執筆を行う。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画として、コロナ禍移住者を受け入れている地域を選出し、その地域をフィールドとした調査を計画していた。しかし2023年5月以降、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5類に変更になるとともに、人々の生活も日常へと回復していっている。もはや新型コロナウイルス感染症に対する社会的なステージは変わりつつある。 その点を考慮すると、テーマとして新型コロナウイルス感染症そのものを扱うのではなく、これによって引き起こされた社会的・心理的変化を扱うことのほうが有用であるように思われる。特に2023年度は、研究代表者および研究分担者がいずれもサバティカルで研究拠点を海外に置くため、国際的な移住を含めたより広義なライフスタイル移住について、Withコロナ・Afterコロナの視点も交えて検討を行う方向へとシフトチェンジしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度は研究発表した学会が近隣の大学で実施されたことなどもあり、旅費がほとんどかからなかったため、使用額を抑えることができた。 繰り越した分は、2023年度はサバティカルで海外に研究拠点を置くため、渡航費や海外での調査費などで使用したいと考えている。
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