研究課題/領域番号 |
22K03038
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
石井 辰典 日本女子大学, 人間社会学部, 准教授 (40708989)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 運動同期 / 向社会的効果 / 文化伝達 |
研究実績の概要 |
ダンスや合唱に代表されるような、複数の個人が時間的・空間的に身体の動きを同期させる現象(以降、運動同期)は、社会では古くから文化普遍的に見られてきた。そしてこの運動同期は、互いへの友好感情や信頼行動を生み、それが集団成員間の社会的絆を深め、凝集性を高めるという向社会的効果を持つことが実証的に示されつつある。これを受けて本研究では、運動同期が人々の間の文化的情報の伝達にも影響を及ぼす可能性を検証する。そして二者が身体の動きを同期させた場合、同期させない場合よりも、一方が持つ信念・選好のもう一方への伝達が促進されるという仮説を立てた。
この仮説の検証のために初年度は、運動同期の向社会的効果を確認することを目指した。特に、新型コロナウィルス感染症の影響が続いており、実験室での対面実験に困難が伴うため、運動同期の効果を検出するオンライン実験パラダイムを確立することを目的として研究を実施した。その結果、参加者がオンライン上で提示されるモデルと指の動きを合わせる場合(高同期条件)には、合わせない場合(低同期条件)よりも、モデルとの共同作業の感覚、モデルへの好意、類似性の感覚などが高かった。この結果は、本研究で開発したオンライン上の課題により、運動同期の向社会的効果を検出できることを示唆している。
2年目以降、初年度に開発したパラダイムを用いて、運動同期の向社会的効果を更に確認するとともに、文化的情報の伝達に与える影響を検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定した通り、運動同期の効果を検討するためのオンライン実験パラダイムを開発し、その妥当性を示すことができた。ただし対面実験をする予定だったものをオンライン実験に移行したため、元々測定予定だったいくつかの変数(例えば、痛みの閾値、信頼ゲームでの相手への配分額)は測定ができなかった。これらの点は2年目以降に検討を試みる。
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの進捗状況」で述べた通り、初年度の研究では測定できなかった変数を対面実験に移行することで測定する予定である。また計画の通り、開発した実験パラダイムを用いて、運動同期が文化的情報(選好など)の伝達に与える影響を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度に所属先を異動したため、研究環境の整備に時間がかかり、研究開始に遅れが生じた。これに伴い、本研究を発表する予定だった学会等へ参加することができなかった。したがって使用予定額と実際の使用額に大きな差が生じた。
差額は、事前の計画通り、実験のための機材購入や研究発表費用(学会参加や論文発表に関わる費用)に使用する予定である。
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