研究課題/領域番号 |
22K03048
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研究機関 | 埼玉学園大学 |
研究代表者 |
大川 一郎 埼玉学園大学, 人間学部, 教授 (90241760)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 学習塾 / ICT / 学習指導 / 心理支援 / コーチング |
研究実績の概要 |
本年度は、昨年度前倒しして行われた「ICT化による業務の変化に伴い、学習塾の職員の具体的にどのような心理的変化が,どのようにもたらされたのかということについて検討する(目的3)」ために収集されたデータの整理と分析を研究協力者とともにおこなった。 上記目的のために前年度に収集された836名のアンケートデータについて、自由記述に対する質的分析、および、ICT化におけるCOVID-19の影響、環境変化、心理変化等の量的データに対する統計的分析をおこなった。 自由記述に対する質的分析においては、全体の80%以上が心理支援において今後のICT化を予測している傾向が示された。しかしその進め方や人との効果的融合に関して想定する内容は学習指導時のICT化とは異なるものであり、心理支援は人が主体となる方向性と現状のICT技術水準への懸念が示された。また、カテゴリ化された内容にはこれまでの学習部分のICT化から得た各種経験を反映した、今後に向けての実践的課題が示されていることが特徴的であった。 量的分析においては、導入しているICTコンテンツの状況、ICT化におけるメリット・デミリットの因子構造、労働時間、保護者コミュニケーション、学習時間把握、コーチング注目度、自己イメージの変化、心理変化の因子構造、心理支援の因子構造、心理支援の満足・疲弊場面の因子構造、各変数の関連性等についての分析を行った。 これらの分析からは、ICT 化の急進によってそれぞれの因子構造が変化した結果、①疲弊場面と心理支援の実行度とは関連が無くなったこと、②生徒・保護者の状況に対する満足感の高さが支援全体の実行度の高さへ関連する傾向は存続していること、③職員自身の支援行為も心理支援の実行度に関連する方向へ変化していること等が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度において、新型コロナの状況が和らいできたこともあり、2番目の目的である塾のICT化における学習指導・心理支援業務の変化を導入側である塾職員の視点から明らかにするための研究を前倒ししておこなった。そして、それらの結果に基づき、さらに研究3を前倒しして行い、質問紙の作成、836名のデータ収集をおこなうところまで達成できた。 2023年度(本年)においては、得られた研究2のデータのさらなる分析、研究3の質的データ、量的データの分析を研究協力者とともにおこなった。 このように申請時の当初計画通り、順調に研究は進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、当初予定していたデータは得られたので、それらのデータの分析をさらに進め、当初目的としたモデルの構築を行うことが大きな方向性となる。これらの過程の中で、必要に応じて、学習塾の職員に対して補足的にインタビューをおこなっていく予定である。 これらを行った上で、2024 年度は、それぞれの研究目的に応じて、得られた成果を学会発表、および、学会誌への投稿をおこなうことにより、一般に報告していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会での発表等に伴う旅費を想定していたが、3年度目(2024年)に成果報告(学会発表、学術雑誌への論文投稿等)に集中することとし、2年度目(2023年)はデータの整理・分析を中心に行ったため、次年度の使用額が生じた。使用計画については、学会報告や学習塾の調査協力者に対する結果報告、アドバイス等にかかわる旅費や謝金等での使用を予定している。
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