研究課題/領域番号 |
22K03072
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
宮崎 章夫 茨城大学, 人文社会科学部, 教授 (90312769)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 認知症 / 行動と心理症状 / 攻撃 / 情動コンピテンス / 視点取得 / 共感 / 熟達化 |
研究実績の概要 |
計画2年目に当たる本年度は主に2つの研究を行った。 第1に、認知症ケアの分野で長い勤務経験もつ職員6名を対象とした面接調査を実施した。まず仕事を始めた当時から現在までの職場経験の振り返りを求めた。その上で情動コンピテンスの形成につながった経験や職場環境などについて、とくに先輩、同僚、利用者との関係性に焦点を当てながら語ってもらった。その結果、職員の共感性を支えている重要な態度として「対等な関係性」という概念が導出された。この「対等な関係性」とは、職員が利用者や他の職員との間に人として対等な関係を築こうとする姿勢である。この態度の重要性として、たとえば職員が入居者を見下すのではなく、かといってヘリ下るのでもない、対等な関係性を求めることが、入居者のことを深く理解しようとするケア実践につながることが示唆された。 第2に、情動コンピテンスの形成因を探索するための追跡調査を開始した。この量的調査では認知症対応型グループホームと特別養護老人ホームの職員を対象とし、認知症ケア場面での情動コンピテンスの水準、仕事の性質や職場環境、共感性などの個人特性、バーンアウトの水準などを、6カ月の間隔を空けて2回測定する。現時点で1回目の調査を終え、1268名のデータを得た。これらの変数間の関係性を分析した結果、職場で提供される外的リソースと、職員の共感性といった内的リソースの両者が情動コンピテンスの水準と関係していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナウイルスの影響により介護施設での観察調査が実施できなかった。そのため調査方法を観察から面接に切り替えて調査を進めているが、調査開始が遅れたことにより、十分な数の対象者が確保できていない。
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今後の研究の推進方策 |
以下の2つの研究を計画している。 職員を対象とした追跡調査の中で、2023年度は第1回目の調査を終了した。2024年度は、同一職員に対して第2回目の調査を実施する。 勤務年数の長い職員を対象とした面接調査を継続し、より多くの職員から回答を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
実施中の追跡調査では、調査会社への費用の支払いが1回目と2回目で独立しているためである。現時点で第1調査の支払いが済んでおり、2024年度に第2調査の支払いをするため、その分の予算が次年度に持ち越される。それ以外にもコロナウイルスの影響により観察調査が行えておらず、その予算が未使用である。現在、観察調査を面接調査に切り替えて実施しており、そこで得られた結果の分析に予算を使用する予定である。
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