研究課題
本研究の目的は,家庭と学校が効果的に役割分担を行いつつ取り組む児童の抑うつ低減プログラムを開発し,その有効性を検討することであった。従来の児童の抑うつに対する介入研究は,一次予防が主であり,学級集団などを対象としたユニバーサルデザインが中心であった(小関,2010;佐藤ら,2013;Sticeetal.,2007など)。それに対して,抑うつの症状を示す児童に対しては,個別の事例として扱われることが多く(David-Ferdonetal.,2008など),介入手続きの定式化は行われてこなかった。しかしながら,子どもの自殺の増加などを考慮すると,抑うつ低減のための介入方略の提言は急務であると考えた。このような観点から,2024年度は家庭と学校が連携して実施する抑うつ低減プログラムの試行を中心に研究を推進した。具体的には,関東地域の中学校全学年全クラスを対象とし,援助要請行動を中心とした手続きを用いた抑うつ低減プログラムを実施した。その際に,生徒の保護者にも参加を呼びかけ,授業を参観いただくとともに,質問紙調査への回答を求めた。これらの手続きによって,認知行動療法に基づく抑うつ低減プログラムの構成要素の検討を行った。さらに,家庭で実施する抑うつ低減プログラムの検討もあわせて行った。さらには,ペアレントトレーニングという形で保護者の参加を募り,家庭での子どもへの関わり方について示す形で介入手続きの検討を行った。これらの成果の一部は,2023年度に開催された国内外の学会ですでに発表を行っている。加えて,2024年度にも複数の学会での成果の発表を予定している。
2: おおむね順調に進展している
本年度の目標であった,家庭と学校が連携して実施する抑うつ低減プログラムの試行は達成することができた。その一方で,保護者の参加を十分に確保することができず,保護者のデータは2名のみの収集に留まった。その一方で,抑うつ低減プログラムは広い範囲で実施することができ,児童生徒を対象としたデータの収集は十分に行うことができた。以上の理由から、上記の評価とした。
2023年度の研究活動によって,おおよそのプログラムの概要を確認することができた。これらを基とし,2024年度は家庭と学校の機能的な連携による抑うつ低減プログラムの開発の成果発信と,実践数の拡大を目指して研究を推進していく。あわせて,これまで得られた成果を公表することで広く社会に発信するとともに,さまざまな意見を取り入れてブラッシュアップしていく。
予定していた国際学会への参加を取りやめたため。
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桜美林大学研究紀要『総合人間科学研究』
巻: 4 ページ: 42-53
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http://www2.obirin.ac.jp/skoseki/news.html