研究課題/領域番号 |
22K03087
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研究機関 | 明星大学 |
研究代表者 |
林 幹也 明星大学, 心理学部, 教授 (80435081)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 社会心理学 / 孤独 / 思考 / 態度 |
研究実績の概要 |
個人の独立性と、思考力・推論能力の関係を明らかにするためのオンライン調査を行った。516名の参加者に対して、(1) ひとりで過ごすことに関する感情・評価尺度(海野・三浦, 2011) と、(2) 単独行動への躊躇(様々な活動に対して単独で従事することを想定した場合にどの程度の躊躇を感じるか)の2つの尺度上での評定を求め、これらの得点をもって個人の独立性の尺度とした。さらに、日常場面での思考力・推論能力を測定するために、先行研究で用いた (3) 命題差別化課題と (4) 行為差別化課題への回答を求め、これらの得点を思考力の尺度とした。これらの課題は、比較的妥当性の低い命題 (例:核兵器をなくせば平和になる)や、比較的的確ではない行為(例:登山に行くためにマイカーを洗う) を、比較的妥当性の高い命題や比較的的確な行為と差別化できるかを問う課題であった。satisficing検出項目によってsatisficingの可能性が高いと判断された参加者57名を削除した上で、以降の分析を行った。これらのデータに対して重回帰分析を行った結果、ひとりで過ごすことに対して否定的感情を持っていることと、本来は単独で行うことの多い活動 (例:郵便局に行くなど) に対して単独で従事することに対して感じる躊躇が強いことは、思考力の低さと関係していることが明らかになった。それらの標準化偏回帰係数βは0.3から0.4程度であり、それらの効果は中程度の強度であった。以上の結果から、個人の独立性と思考力・推論能力の間に関連があるという本研究の見込みが妥当であった可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実施した調査において、当初の見込み通りに、論文として投稿できる可能性の高いデータが得られたため。しかし、当初の予定以上の実験・調査などは実施しておらず、想定を超えるような新たな発見などがあったわけではないため、「おおむね順調」と評価するのが適切と考える。
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今後の研究の推進方策 |
これまで得たデータによれば、個人の独立性と思考力が関連しているという本研究の仮説は妥当であるとは思われるが、両者の因果関係の方向性、すなわち前者が後者の原因となっているのか、あるいは後者が前者の原因となっているのか、さもなくば第3の変数が両者の原因となっているのかを、いくらかでも明らかにするための方策が必要である。さらに、個人の独立性そのものが何によって形作られ、維持されているのかを、社会心理学を含む様々な観点から分析する必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、オンライン調査における回答者数を調整したためである。2022年度にオンライン調査を319000円で実施したが、近年では調査コストの上昇が発生しており、当初予定通りの回答者数を確保すると2022年度予算を超過することが明らかとなった。そこで、回答者数を減らし、各セルの回答者数を均一化したので、当初予算よりもやや少ない金額に落ち着いた。これによって発生した次年度使用額については、2023年度に実施する調査における回答者数増のために使用する予定である。
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