研究課題/領域番号 |
22K03093
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
中田 英利子 神戸学院大学, 心理学部, 研究員 (80440866)
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研究分担者 |
富高 智成 京都医療科学大学, 医療科学部, 講師 (70636597)
向居 暁 県立広島大学, 地域創生学部, 教授 (80412419)
清水 寛之 神戸学院大学, 心理学部, 教授 (30202112)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 失敗 / 失敗の意味 / 失敗エピソード / 加齢 / 時間的展望 / 自伝的推論 / 原因帰属 / テキストマイニング |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、若齢期以降を対象に、加齢に伴う失敗の意味と時間的展望との関係の変化を解明することである。前年度までと同様の方法を用いて、失敗の意味と失敗エピソードに関する自由記述データを追加収集し、テキストマイニング等の手法を用いて質的・量的に解析する。(1)若齢期に当たる大学生を対象に、失敗の意味に関する自由記述データを追加収集する。社会から求められる性役割期待と発達過程の経験が、自伝的推論及び失敗の意味の形成に及ぼす影響を把握する。(2)大学生を対象に失敗エピソードに関する自由記述データを追加収集し、失敗の意味を形成する失敗エピソードの内容等を把握する。(3)若齢期から高齢期を対象に、失敗の意味に関する自由記述と時間的展望に関する質問紙への回答を求めて、加齢に伴う失敗の意味と時間的展望との関係の変化を把握する。以上に関する基礎的データを収集するため、2023年度は以下の研究活動を行った。 1.調査実施の準備:共同研究者も(2)を実施できるよう、研究審査倫理委員会に再承認を得た。当初の計画にはなかったが、中年期に(2)を実施する機会を得た。(3)のため、先行研究文献を入手し、自伝的推論及び原因帰属等に関する重要な知見を整理した。 2.調査実施:大学生184名から(2)のデータを追加収集した。当初の計画にはなかったが、学外の高齢者を対象に(2)を対面にて行った。しかし、無報酬であったため、目標データ数に達しなかった。今回、高齢者から得たデータは、予備的・事例的研究として学会にて公表し、今後、調査会社から高齢者に依頼する計画を立てた。 3.調査データの分析:テキストマイニング等を用いて、大学生から得られたデータを解析した。 4.調査データの公表:本研究テーマと関連して、データを分析し、関連事項の論考も含めて国内学会で発表した。2024年度の国際学会のため、データを再分析して論考した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画では2022~2024年度の3か年を研究期間に策定し、やや遅れて以下の研究活動を行った。(1)調査実施(既有データに追加するために、大学生を対象に失敗の意味と失敗エピソードに関する調査)、(2)データ分析((1)を既有データに追加して分析)、(3)失敗エピソードに関する調査結果の公表(学会発表)、(4)失敗の意味に関する調査結果の論文化の準備、(5)加齢に伴う失敗の意味と時間的展望の関連の変化に関する調査の準備を行った。 (1)研究責任者だけでなく、共同研究者も大学生を対象に失敗エピソードに関する調査を実施できるよう、全ての研究機関の研究倫理審査委員会に再申請した。全ての研究機関の長から承認を得るのが、予定よりやや遅れた。研究責任者及び共同研究者とで、大学生を対象に失敗エピソードに関する調査を実施したが、属性(性別、年齢)に適合する研究協力者の不足により、収集したデータに偏りが生じた。データの追加収集が、当初の計画より遅滞が生じている。当初の計画にはなかったが、外部施設の高齢者を対象に失敗エピソードに関する対面調査を実施した。しかし、無報酬であったため、目標データ数に達しておらず、データ分析にやや遅れが生じている。 (3)目標データ数には達していなかったが、調査結果の一部を関連する学会等で公表し、専門家に意見を求めた。 (4)テキストマイニングは、自由記述データに含まれる頻出語などを客観的・量的に抽出できるが、どの抽出語を優先的に解釈するかは、分析者の主観に依存すると考えられた。その難点を克服するために、テキストマイニングに数理的解析手法が適用可能なソフトウェアを購入して再分析した。自伝的推論や原因帰属等に関する最新の先行研究の知見も整理した。 (5)これまでの暫定的な調査結果と、自伝的推論と時間的展望等に関する最新の先行研究文献を入手し、予備調査を慎重に計画した。
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今後の研究の推進方策 |
失敗の意味に関する調査データについて、テキストマイニングに数理的な解析手法を適用して再分析した。その結果に基づいて論文化を行い、学会誌に投稿する。失敗エピソードに関する調査は、属性による偏りを解消するため、データ収集を継続する。データ収集後に、論文化して学会誌に投稿する。当初の計画にはなかったが、高齢期における失敗エピソードに関する対面調査を実施した。しかし、無報酬であったため、目標データ数に達しなかった。今回の高齢者のデータは、予備的・事例的研究として学会等にて公表する。高齢期の失敗エピソードに関する十分なデータを収取するため、調査会社に依頼する。当初の計画にはなかったが、知人を介して、中年期の失敗エピソードに関する対面調査実施の機会を得た。中年期の調査が実施可能となった場合には、高齢期の調査と併せて、全ての研究機関の研究倫理審査委員会に再申請する。当初の計画どおり、加齢に伴う失敗の意味と時間的展望との関係の変化に関する予備調査及び本調査をWeb上で実施する。失敗エピソードの想起を求めることで、過度の心理的負担やストレスを与えないように十分に配慮して研究を進める。これまでと同様に、後の研究計画に支障のない範囲で、研究データの一部を関連する学会等で公表し、専門家から意見を求めて、論文化に役立てる。他の研究者による最新の研究成果を本研究に活用できるか否かを検討しながら、研究内容と調査方法に関しては、当初の計画から大幅に変更せず、研究データの蓄積を図る。また、特に失敗に関する自由記述データは、極めて個人的な内容を含んでいる恐れもある。外部に情報漏洩することのないよう、引き続き、個人情報の管理を厳重に行う。新型コロナウイルス感染症対策に関連した状況変化、政府・自治体・所属機関等の諸施策に迅速に対応し、研究倫理等の規準に従って、倫理的配慮を十分に維持しながらも研究を着実に推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画では、大学生を対象とした暫定的な調査結果を踏まえたうえで、調査項目を慎重に選定し、若齢期から高齢期を対象にした、加齢に伴う失敗の意味と時間的展望との関係の変化に関する予備調査及び本調査を2022年度にWeb上にて実施予定であった。新型コロナウイルス感染症対策に関する社会情勢の変化、個人情報保護法改正施行に伴う研究倫理指針の改訂、共同研究者の所属が複数の機関にわたるため、全ての研究倫理審査委員会及び研究機関の長からの承認が予定よりやや遅れた。そのため、研究調査全体の開始にわずかな遅滞が生じている。大学生を対象とした失敗エピソードに関する調査については、協力者の属性に偏りが生じており、まだ目標データ数に十分に達していない。そのため2024年度も引き続き、大学生を対象に失敗エピソードに関する調査を実施する。当初の計画にはなかったが、学外の高齢者を対象にした失敗エピソードに関する対面調査の実施、テキストマイニング及び数理的解析手法の併用による、失敗の意味に関する調査データの再分析、本研究テーマと関連する自伝的推論、時間的展望、原因帰属に関する最新の研究知見の整理を行い、関連する事項について再び論考を行った。若齢期から高齢期の者を対象に、加齢に伴う失敗の意味と時間的展望との関係の変化に関する予備調査及び本調査は、慎重を期して、2024年度にWeb上にて実施することにした。
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