研究課題/領域番号 |
22K03112
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
富樫 公一 甲南大学, 文学部, 教授 (90441568)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | Covid-19 / 人種差別 / ヘイトクライム / 移民 / 社会的トラウマ / トラウマ / パンデミック |
研究実績の概要 |
報告者は、任意の研究協力者12名に対して、個別に半構造化面接によるインタビュー(1-2時間)を行い、主題別ナラティブ分析を行った(Riessman, 2008; Rodriguez, 2016)。このアプローチは、語りから抽出された顕著なテーマを、より広範な一連の出来事の中に埋め込むものである。これは、主観的で解釈的な協力者の語りをそのまま捉えることを可能にするもので、彼らがどのように出来事を経験し、それにどのような主観的意味を付与したかを知ることができる(Bamberg, 202)。インタビューはCovid-19の感染状況やその他の社会状況を考慮して、協力者の希望に合わせてオンラインと対面を併用した。協力者たちは、NYの日本人ネットワーク、日本人支援団体、研究者の縁故、その他オンラインの広告を通じて募集された。 分析の結果、時間的シーケンスの各段階で主要要素が抽出された。結果を考察したところ、Covid-19のパンデミック期に増加したアジア人差別に関するNY在住邦人の精神的苦悩の種類を調査した。パンデミック期に彼らが体験した苦悩には、いくつかの種類があり、それはパンデミック発生前からの背景の文脈と、発生中の影響要因、発生後の体験の変化といった体験コースを考慮して理解される必要があることが分かった。複合的に構成された苦悩の構造において、重要な役割を果たしていたのは、「社会から認識される性」と「人種・性の自覚と区別意識の高まり」であった。 本研究は、NY在住邦人の精神的苦悩の種類を明らかにすることを目的としたものだが、この調査結果は彼らへの心理支援において重要ないくつかの要素を示唆するものでもあった。研究成果は論文として学術雑誌に投稿することを予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書の計画通り、2年目の調査とデータの分析、考察を終了した。計画では任意の研究協力者15名程度にインタビューを予定していたが、実際にインタビューを行うことができたのは12名であった。研究には15名の応募があったが、条件には当てはまらない方が3名いたためである。ただし、12名でも十分な調査を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
3年目になる現在は研究2をすでに開始している。研究1の協力者の中から、研究1で抽出されたカテゴリーごとに改めて研究協力を求め、任意に依頼に応じた協力者5名に対して月に1回50分程度の自由連想を応用した非構造化面接を行っている。それぞれのインタビューは、10か月程度行う予定である。結果は4年目に精神分析的解釈学によって分析することを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
米国を拠点とした研究であるために、為替の変化の影響を強く受けることが予想されたこともあり、2023年度の研究は甲南大学の研究助成金を活用することで、科研費からの支出を抑えた。そこで、次年度使用額が生じた。 2024年度は米国NYでのインタビューになることから、極端な円安を受けて米ドルでの決済額は増加することが予定される。研究が計画された2021年度よりも円が30%下落していることから、研究費の予算は30%増額を考える必要がある。次年度使用額はこの増額分として使用される予定である。
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