研究課題/領域番号 |
22K03117
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
豊田 彩花 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 認知行動療法センター, 科研費心理療法士 (30838694)
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研究分担者 |
伊藤 正哉 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 認知行動療法センター, 部長 (20510382)
大江 悠樹 杏林大学, 医学部, 助教 (40722749)
細越 寛樹 関西大学, 社会学部, 教授 (80548074)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 認知行動療法 / 身体症状症 / 統一プロトコル / 診断横断的認知行動療法 |
研究実績の概要 |
身体症状症(Somatic Symptom Disorder)は,身体に悪いところがないとされるにも関わらず,頭痛やめまいなど身体的な症状に悩まされる疾患である。身体的な症状だけでなくうつや不安といった気持ちの問題も引き起こし,生活の質を大きく低下させる。しかしながら現時点で明確な治療法は十分確立されていない。本研究では,出来事を認知・感情・身体・行動に分けて対処法を考えていく認知行動療法と呼ばれる心理療法が身体症状症にも効果があるのかを確認するため,認知行動療法を受けることで身体症状症患者の生活の質が改善されるかどうかを検証する。本研究の目的は、身体症状症に対して、うつと不安に対する診断横断的な認知行動療法である統一プロトコル(UP)の安全性と有効性を検証することである。 2022年度後半から2023年度前半にかけては、研究代表者の産前産後休暇と育児休業に伴い研究を中断し、2023年度後半に再開した。 これまで、身体症状症に対する認知行動療法の文献検討を行ったい、その結果を認知療法・認知行動療法学会にてポスター発表を行った。具体的には、身体症状症に対するCBTについてレビューを行い、介入方法、週数、セッション数、介入技法の整理を行うとともに、UPとの共通点や差異を検討した。その結果、UPには既存の身体症状症に対するCBTにおいて使用されてきた主要な技法のほとんどが含まれていることが明らかになった。このことからUPは身体症状症に対しても応用可能であり、一定の効果が期待できるものと推察された。さらに、UPを実際に身体症状症に応用するため、先述のレビューで集められた既存の身体症状症に対するCBTの内容の精査を進め、心理教育およびプログラムの内容について研究分担者らと検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度前半は研究代表者の育児休業に伴い、研究を中断しており、2023年度後半に再開した。そのため全体として当初の予定より遅れが生じている。 本年度は、2022年度までの身体症状症に対する文献検討を踏まえ、身体症状症における認知行動療法(CBT)の介入の基盤となる理論の有無、効果、心理教育やプログラムの内容についてレビューを行った。その結果、身体症状症に対するUPの臨床試験を実際に開始するには組み入れ基準や主要評価項目など重要な側面においてより詳細な検討が必要であることが明らかになった。これらの検討に時間を要しており、まだ臨床試験の実施には至っていないことから当初の予定より遅れが生じていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はUPを専門とする新たな研究分担者を迎え入れる約束が得られている。UPを用いた臨床試験の経験が非常に豊富であり、現在臨床試験の開始に向けて課題となっている事柄に対して有用な助言が得られ、検討が進むと期待される。また、資料整理など研究を補助する研究員の雇用も予定しており、よりスムーズに研究を進めることができると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度前半には研究代表者の育児休暇取得に伴い、研究を中断しており、また詳細な検討が必要となり介入を延期していたため、当初予定されていた臨床実践における臨床試験コーディネーターの人件費およびデータ集積管理システムの契約、学会発表のためのポスター印刷代において残額が生じた。2024年度は、レビュー論文および実践報告を国内学会において成果公表をする予定で、臨床実践をする補助者の人件費と、成果発表をするための旅費、印刷代を計上している。
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