研究課題/領域番号 |
22K03124
|
研究機関 | 愛知大学短期大学部 |
研究代表者 |
遊間 義一 愛知大学短期大学部, ライフデザイン総合学科, 教授 (70406536)
|
研究分担者 |
金澤 雄一郎 国際基督教大学, 教養学部, 特任教授 (50233854)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 犯罪の特殊・固定化と多様化 / 性犯罪受刑者 / 改善更生プログラム |
研究実績の概要 |
2023年度の目的は,競合リスクを考慮した生存分析を用いて罪名別に再犯過程をモデル化し,これを日本の性犯罪受刑者の追跡データに適用し,日本の性犯罪受刑者における特殊・固定化と多様化に関する検討を加えることであった。 分析対象は, 2012年1月から2014年12月までの3年間に日本全国の刑務所及び少年刑務所から出所した性犯罪受刑者で,性犯罪者処遇プログラム(R3)の受講群1,444名及びこれと比較可能と判断された非受講群324名のうち,本件が強姦,強制わいせつ罪及び条例違反である者計683名である。 競合リスクモデルを用いて,罪名ごと,性犯罪を再犯イベントとした場合と非性犯罪を再犯とした場合ごとに累積発生関数(CIF)を求めた。最終モデルの共変量としては,71個の共変量の候補の中から,比例性の条件を満たし,かつBICにより最も適合度のよいとされたモデルに含まれるものを採用した。 分析の結果,1000日後(非)性犯再犯累積率の推計値は,それぞれ強姦(性犯再犯 0.15,非性犯再犯 0.24),強制わいせつ(0.19, 0.08),及び条例違反(0.42, 0.14)である。特殊・固定化の指標として性犯再犯累積率/非性犯再犯累積率を考えてみると,強姦0.63,強制わいせつ2.4,条例違反3.0となっている。 これらを総合すると,第一は罪名別で犯罪の特殊・個別化傾向はかなり異なっており,条例違反が最もその傾向が強い。第二は,最も特殊・固定化傾向が弱いと思われる強姦ですら,性犯再犯累積率/非性犯再犯累積率は0.63であり,これは令和4年の新受刑者全体の同比率0.05より,かなり大きいことから,強姦においても,性犯罪を繰り返す傾向は,一般受刑者より強いことが推測される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,個別の追跡データを用いた競合リスク分析の結果を得ることができたため。現在まで学会等で発表した内容は,セミパラメトリックなモデルによる推定結果にとどまっているが,実際には,パラメトリックなモデルを用いた分析にも着手している。ただし,(セミ)パラメトリックのモデルを用いる際に満たすべき条件に本研究のデータが合わない場合が多いので,この点に関する工夫をする必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
2024年度は,引き続き,出所受刑者の再犯に関する追跡データを用いて,日本の性犯罪受刑者における特殊・固定化と多様化に関する解析を行う予定である。なお,昨年の研究で,罪名ごとに再犯状況や特殊・固定化と多様化の状況が異なることが分かったが,それと同時に,同じ罪名でもいくつかの質的に異なる類型が存在する可能性が示唆された。そこで,2024年度は,罪名の中で再犯状況や特殊・固定化と多様化の状況,さらに処遇効果に関して質的に異なる類型の発見に焦点をあてた研究を進める予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
未使用が生じた主たる理由は,研究代表者が国際学会での発表での旅費を別の研究費で賄い,本研究費で支出しなかったためである。2024年度は,国際学会での発表の旅費等及び高性能のPCを購入により使用する予定である。
|