研究課題/領域番号 |
22K03129
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
高井 美智子 埼玉医科大学, 医学部, 客員講師 (80650829)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 児童青年期 / 自殺予防 / 希死念慮 / 心理社会的特徴 |
研究実績の概要 |
本研究では、自殺企図により救急医療施設を受診した児童・青年期の患者に対して、臨床心理士による継続的な面接調査と質問紙調査を実施し、「死にたい」ほどつらい状況に追い込まれた心理社会的特徴や、自殺企図後の経過や回復過程を明らかにする。そこから、希死念慮が生起する前の早期段階での支援導入を目指したチェックリストと、具体的支援方法を記したガイドブックを作成する。 令和4(2022)年度では、救急医療施設を自殺企図により受診した10歳から19歳までの児童・青年期の患者を対象に、①面接調査による「死にたい」ほどつらい状況に至った心理社会的背景調査、②継続的な面接調査および質問紙調査による自殺企図後の経過や回復過程の分析、を開始した。 令和5(2023)年度末までに、計5名の対象者から調査協力への同意を取得した。対象者に対して、自殺念慮尺度への回答を依頼するとともに、臨床心理士がインタビューガイドに沿って初回の面接調査を実施した。そこから1カ月後、3カ月後、6カ月後の計3回のフォローアップの調査面接を行い、令和5(2023)年中に4名の対象者がフォローアップの調査面接を完了した。また、初回の調査面接での臨床心理士と対象者とのやり取りを書き起こした逐語録(トランスクリプト)を作成し、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(modified grounded theory approach, M-GTA)を用いて、「死にたい」ほどつらい状況に至った心理社会的背景を調査するためのトランスクリプト分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、児童・青年期の自殺念慮を測る尺度としてSIQ(Suicide Ideation Questionnaire)の短縮版(SIQ-JR)日本語版を使用する予定であったが、オリジナルSIQの1項目が変更になり、SIQ日本語版の使用ができなくなっていた。そのため、自殺念慮を測る尺度について、研究協力者らと改めて議論し、自殺念慮尺度(13項目版)を採用した。 令和4(2022)年度には3名の対象者から同意が得られたが、目標とする対象者数(10例)に満たないことから、令和5(2023)年度も引き続き対象者のエントリーを行った。 令和5(2023)年度末までに、計5名の対象者から研究参加の同意が得られた。対象者に対して救急搬送時に初回面接を実施し、そこから1カ月後、3カ月後、6カ月後の計3回のフォローアップの調査面接を行った。令和5(2023)年中に4名の対象者へのフォローアップの調査面接が終了したが、1名は継続している状況である。 以上より、本研究はやや遅れていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
令和6(2024)年度では、自殺企図により救急医療施設を受診した児童・青年期の患者の自殺企図後の経過や回復過程の分析を実施する。 具体的には、①臨床心理士がインタビューガイドに沿って対象者へ計3回(1カ月後、3カ月後、6カ月後)のフォローアップの調査面接を実施し、対象者とのやり取りを書き起こした逐語録(トランスクリプト)を作成する、②初回の調査面接時と6カ月後のフォローアップの調査面接時に回答を依頼した自殺念慮尺度(13項目版)を集計し結果を検討する、③M-GTAによりトランスクリプトを分析する。 また、得られた結果から、希死念慮が生起する前の早期段階での支援導入を目指したチェックリストと、具体的支援方法を記したガイドブックを作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4(2022)年度ならびに令和5(2023)年度は、新型コロナウィルスの影響で、国際学会への参加や対面による会議の開催が困難となり、旅費や会議会場費、謝金が予定よりも支出されなかった。また、研究で使用する尺度(SIQ-JR)の再検討が必要となったことで、調査開始が遅滞し、年度内に調査対象者が目標人数に到達せず、謝礼や分析に係る費用が予定よりも下回った。 令和6(2024)年度は、フォローアップの調査面接を継続するため、面接調査ならびに質問紙調査で使用する文具一式、対象者への調査協力謝礼が必要となる。また、得られたデータの入力・情報整理の委託費、質的分析(M-GTA)への協力費、国内外における成果報告のための旅費(国内外)、英文校正費、成果報告等のための論文執筆関連図書代を要する。
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