研究課題/領域番号 |
22K03139
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
本山 智敬 福岡大学, 人文学部, 教授 (10551434)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | パーソンセンタード・アプローチ / オープンダイアローグ / 傾聴 |
研究実績の概要 |
2023年度の前半は、PCAの傾聴に関する研究成果の一環として、PCAの研究者・実践家と共に『パーソンセンタード・アプローチとオープンダイアローグ』を出版し(筆者は本書の共著者)、筆者らのこれまでのPCA研究の成果を公表した。本書において筆者はパーソンセンタード・アプローチの基本概念や、オープンダイアローグとの共通点、相違点についてまとめ、PCA概念の整理を行った。また、PCAの具体的実践の一つとしてのエンカウンター・グループにおける対話とそのファシリテーションについて、福岡大学の研究部論集に論文を公表した。本論文も本研究の中核をなすPCAでの対話実践の基盤となるものである。さらに10月に福井市で行われた人間性心理学会の年次大会において、ワークショップではエンカウンター・グループのファシリテーターを担当し、自主シンポジウムでは「人間尊重のありかたを伝えていくために:PCAのグループ実践からできることを考える」というタイトルで、PCAの実践家2名と共に企画した。 後半はイギリス、ノッティンガム大学のDavid Murphy氏を日本に招聘し、10日間で3つのワークショップを開催した。当初の研究計画ではmPath日本語版を完成させたのちにワークショップを実施する予定であったが、予定を変更し、PCAの初学者向けのアンケート調査を行う代わりにワークショップを開催することで、PCAの初学者の生の意見を収集し、それをmPath日本語版の制作および傾聴トレーニング法の開発に活かすこととした。メインの奈良WS(参加者20名)をはじめ、広島、松山でもWSを開催し、本研究における有益な基本データを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の中心にある、傾聴トレーニング法の開発のためのmPath日本語版の作成が予定よりも遅れているため、「やや遅れている」と評価した。しかし、傾聴トレーニング法のベースとなるPCAの傾聴に関するこれまでの研究成果の整理と公表を進め、本と論文の出版を行うことができた。また、予定を早めてDavid Murphy氏の日本への招聘を2023年度末に実施し、日本の若手PCA臨床家と共にDavid氏を囲んでのWSを開催した。その間、mPath日本語版作成の遅れに関して、作業手順の確認をDavidと直接行うことができ、現在はmPath英語版へのアクセス権を得て自由に使用可能な状態となっている。本研究の最終年度にmPath日本語版を完成させるべく、現在は英語と日本語の対訳作業を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
まずはmPath日本語版の作成にあたり、英語部分の日本語対訳リストを完成させ、David氏の協力を得ながらwebシステム上でmPath日本語版が動くように作業を進めていく。それと同時に、PCAの傾聴を検討する上でのオープンダイアローグの対話について、その実践から得た知見を論文にまとめる。また、PCAとオープンダイアローグの対話に関して、9月のPCAの国際学会(ギリシャ)および人間性心理学会において、研究成果を発表する予定である。 mPath日本語版の完成と共に、その実践やこれまでの研究成果をもとに新たな傾聴トレーニング法の開発・公表まで行うのが今年度の計画である。PCAの研究成果の公表は予定通り進んでいるため、mPath日本語版の作成が遅れないように留意しながら、傾聴トレーニング法にそのシステムを組み込んでいくことが本研究のポイントとなる。そのため、Davidとの連携をさらに強化すると共に、mPath日本語版作成のための協力者を得ながら進めていくこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度はDavid Murphy氏をイギリスから日本へ招聘し、日本国内で10日間で3つのワークショップを実施したため、当初2024年度に計上していた助成金の一部を2023年度に計上した。その残金が次年度使用額にあがっている。2024年度は、当該年度分として請求した助成金と合わせ、PCAの国際学会(ギリシャ)および国内学会への参加、mPath日本語版および傾聴トレーニング法の開発のための諸経費に、助成金を主に使用する予定である。
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