研究課題/領域番号 |
22K03155
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
冨家 直明 北海道医療大学, 心理科学部, 教授 (50336286)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 健全発達 / ソーシャルスキル / 自殺予防 / 高校生 / 生徒指導 / 媒介分析 / 肯定的再評価 |
研究実績の概要 |
【問題】高校生の自殺者数は増加傾向にあり,自殺の要因として精神疾患やうつ病が目立つなど,高校生の心理社会的な問題に関心が集まっている。良好な社会適応や精神的健康を維持するために,未然防止や予防的視点から児童・生徒の社会的スキルや感情調整,認知的ストレス対処能力などを育成するアプローチとして,PYD(健全発達)が注目されている。高校生の心理社会的問題に関連性のある抑うつ傾向と,PYDによる発達段階の特性に合った予防教育との関係を検討することは,高校生が健康的な生活を送るための手がかりとなる。本研究では,PYDの中心的役割を果たす社会情動的スキルを,ソーシャルスキルとストレス対処場面における肯定的再評価の2つに絞って精神的健康度に及ぼす影響を探索したい。 【方法】高校1~3年生324名を対象に質問紙調査を行った。ソーシャルスキルの測定尺度として,ほっと高校生版,ストレス対処時の認知的評価を測定する尺度として,肯定的再評価尺度,精神的健康度の測定として,バールソン児童用抑うつ自己評価尺度(DSRS)日本語版とKessler10(K10)質問票日本語版を使用した。 【結果】ソーシャルスキルが精神的健康度に及ぼす影響について,肯定的再評価が媒介するかどうかを検討するために媒介分析を行った。この結果,ほっと合計はK10得点を有意に予測していた。さらに,肯定的再評価を測定するPRAS合計を説明変数に追加した結果,ほっと合計はPRAS合計を有意に予測し(β=-.15,p<.05),PRAS合計はK10得点を有意に予測した。また,ほっと合計からK10合計への効果は有意になった。間接効果の検定の結果,PRASの有意な媒介効果が認められ部分媒介モデルが検証できた。高校生において、肯定的再評価の能力はコミュニケーションスキルを媒介してK10を低減する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍の影響により、高校現場への入り込みの頻度が減り、かつ、計画的な対応が困難であった。遠隔による調査の実施に切り替えても、高校生の参加・不参加の状態が不安定となっており、信頼性の確保に困難が生じた。このような状況が続いたこともあって、本来の計画である、学校現場との共同体制の構築が十分ではなく、当初の計画よりも若干の遅れが見込まれている。一方で、GIGA制度を応用した校内ネットワークに外部研究者が加入できるようにするといった修正的対応を検討しており、今後はその遅れを取り戻す予定である。
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今後の研究の推進方策 |
小規模小資源校とそうでない都市部の大規模校においてコミュニケーションスキルや認知的再評価能力がメンタルヘルス指標に与える影響について比較することが本研究のねらいである。現時点において、小規模小資源校、大規模校それぞれの参加協力は確定しており、また、コミュニケーションスキルと肯定的再評価力の2つの尺度指標の作成、メンタルヘルス指標の作成などにおいては、2022年度の研究においておよその見通しが得られたところである。今後はそうした成果を元に、学校規模の比較検証を行い、地域に合わせてどのような支援が効果的であるかを検討するステップに進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナによりフィールド校への介入が困難になったため、当初計画を延期することが必要となった。特に教材の作成の費用や成果公開のための学会発表に関する旅費の執行について保留、持ち越し分が発生した。当初の研究計画を変更し、これらを次年度に実施することが可能なため、当初の研究目的は十分に達成することが出来る。また、翌年度に繰り越す経費は、交付申請書に記載されている研究計画の一部に係る経費内であり、積算の内容及び金額の妥当性は維持できる。
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