研究課題/領域番号 |
22K03163
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
塩崎 麻里子 近畿大学, 総合社会学部, 教授 (40557948)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 後悔 / エンドオブライフ / ウェルビーイング / 認知焦点理論 / 価値随伴性 |
研究実績の概要 |
人生の最後に後悔なく、ウェルビーイングな状態で過ごすために重要な認知的特性について、加齢の影響に着目して、検討を行った。成人を対象にウェブを介した質問紙調査を実施したところ、有効回答として980名(男性427名、女性549名、どちらともいえない4名;20-77歳;平均年齢は41.17±10.38歳)から回答が得られた。認知特性として取り上げたのは、制御焦点(促進焦点・予防焦点)と時間に対する価値随伴性(過去・現在・未来)である。ウェルビーイングの高さは、未来への価値随伴性と関連があることがわかったが、価値随伴性の時期に年齢による違いは見られなかった。価値随伴性の時期に影響があったのは、制御焦点であった。予防焦点が高い人は、過去への価値随伴性が高く、損失回避傾向が強いにも関わらず後悔が多く、後悔のコントロール感が低く、ウェルビーイングも低かった。逆に、促進焦点が高い人は、未来への価値随伴性が高く、目標や希望を達成することに注力する傾向が高く、後悔のコントロール感が高く、後悔が少なく、ウェルビーイングが高かった。ただし、年齢と促進焦点には交互作用がみられ、高齢であると、促進焦点が高いことが後悔を増やすことにつながる可能性が示唆された。これらのことから、人生の最後に後悔なく、ウェルビーイングに過ごすためには、避けられない損失に関しては、予防焦点的にならずに、損失を受け入れる、あるいは利得獲得に焦点を移行することは有用であると考えられる。さらに、ウェルビーイングの下位因子や後悔の詳細についての検討を加えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
想定していた学会発表や論文化が遅れている
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今後の研究の推進方策 |
人生の最期に後悔なく、良い状態でいるために老いや死というコントロール不能な事象にどのように向き合っていくか。これまでに、人生の価値志向性と認知焦点、価値随伴性というアプローチで、加齢という側面から、適切な後悔の制御方略について示してきた。今後は、意思決定という枠組みを取り入れて、文化社会的背景による違いを示し、日本人においての人生の最期の向き合い方について提言できるよう研究を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は国際学会の参加ができなかったので、次年度に発表を予定している。発表抄録は、査読をうけ採択されている。また、国際比較研究の実施に向けて準備をおこなっている。
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