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2022 年度 実施状況報告書

完全主義が過剰適応に及ぼす影響過程に関する行動科学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 22K03171
研究機関広島大学

研究代表者

岩永 誠  広島大学, 人間社会科学研究科(総), 教授 (40203393)

研究分担者 大山 真貴子  群馬医療福祉大学, 看護学部, 教授 (10369431)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード過剰適応状態 / 過剰適応傾向 / 自己志向的完全主義 / 社会規定的完全主義 / 共分散構造分析 / 確認的因子分析 / 労働者
研究実績の概要

過剰適応とは,社会や文化といった外的環境に過度に適応し,その結果として自己の内的安定性が損なわれた状態を指す。過剰適応により過剰労働に陥る原因として,他者からの承認を得,拒否されないようにするための外発的側面と仕事を完全に仕上げたいという内発的側面が考えられる。令和4年度は,過剰適応状態尺度の下位因子である外発的側面(他者からの拒否回避・自己犠牲的労働)と内発的側面(ワーカホリック,完璧な仕事遂行)に及ぼす完全主義の影響に関する検討を行った。完全主義は,自ら完全であろうとする自己指向的完全主義と他者から完全性が求められていると認識している社会規定的完全主義の二側面から測定した。
企業等に就労する労働者1118名(男性539名,女性574名,無回答5名,平均年齢40.26歳)を対象に,ウェブ調査を実施した。過剰適応状態尺度と成人用過剰適応傾向尺度は確認的因子分析を行い,下位因子の構成が妥当であることを確認した。自己志向的完全主義と社会規定的完全主義はそれぞれ主成分分析を行い,因子負荷量の高い項目のみを用いた。完全主義から過剰適応傾向を介して過剰適応状態の下位因子に及ぼす影響過程は,共分散構造分析により検討した。その結果,過剰適応の外発的側面である他者からの拒否回避と自己犠牲的労働は,完全主義(自己志向的・社会規定的)から過剰適応傾向の下位因子である評価懸念・強迫性格を介して援助要請への躊躇を経て,促進されることがわかった。また,過剰適応の内発的側面であるワーカホリックは,過剰適応傾向の全ての因子が媒介して促進されることがわかった。一方,完璧な仕事遂行は,完全主義から援助要請への躊躇と強迫性格を媒介して促進されていた。このように,下位因子によって過剰適応状態の規定因が異なることが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

過剰適応は,職場などの外的環境への適応を重視することによって,自己の安定性といった内面的な適応とのバランスが崩れた状態であると定義されているにも関わらず,これまで過剰適応への陥りやすさである傾向を測定評価する尺度が開発され,検討が進められてきた。申請者は過剰適応に陥っている状態を測定する過剰適応状態尺度を開発し,過剰適応を傾向と状態に区分けした評価を行うこととした。過剰適応状態尺度は,過剰適応の外発的側面として他者からの拒否回避と自己犠牲的労働の2因子を,内発的側面としてワーカホリックと完璧な仕事遂行の2因子から構成される。令和4年度は,過剰適応状態の外発的側面と内発的側面を規定する要因が異なると考え,完全主義の下位要素として自己志向的完全主義と社会規定的完全主義,および過剰適応傾向との関連性を検討することを計画し,予定通り調査を実施することができた。ウェブ調査会社に依頼してサンプリングすることで,年齢層や性別に偏りのないデータを測定することができた。

今後の研究の推進方策

令和5年度は,(1)完全主義に影響する個人要因の検討,(2)過剰適応とストレス反応,バーンアウトとの関連に関する検討,を計画している。
(1)完全主義に影響する個人要因の検討
自己志向的と社会規定的の2つの完全主義に関連する個人要因の影響過程を検討する。自己思考的完全主義に影響するワークストレス関連要因として,職業的アイデンティティや達成動機,タイプA行動を想定し,社会規定的完全主義に影響するワークストレス関連要因として,サポーティブな組織風土や承認欲求,評価懸念を想定し,これらの影響過程を検討することを計画している。自己志向的完全主義と社会規定的完全主義への影響過程が異なるかについても併せて検討する。
(2)過剰適応とストレス反応,バーンアウトとの関連に関する検討
過剰適応の結果,ストレス反応やバーンアウトとどのように関連するのかを明らかにする。過剰適応状態の内発的側面と外発的側面により,ストレス反応やバーンアウトの下位因子との関係性が異なるのか,またその影響過程に違いがあるかについて,共分散構造分析を用いて検討する計画である。また,ストレスだけでなく仕事を達成したことによる充実感や満足感といったポジティブな側面との関連も検討する。

次年度使用額が生じた理由

分析用コンピュータの購入を計画していたが,調査費が嵩んでしまったため,2022年度の予算では購入が難しくなった。そのため2023年度の予算と合わせて購入することに変更した。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] Development of the Diabetes Self-Care Inhibition Scale for Disasters2023

    • 著者名/発表者名
      Oyama, M. & Iwanaga, M.
    • 雑誌名

      Journal of Japan Health Medicine Association

      巻: 31 ページ: 451-457

    • DOI

      10.20685/kenkouigaku.31.4_452

  • [雑誌論文] 脳の利己的合理性 -認知の歪みの落とし穴-2023

    • 著者名/発表者名
      岩永誠
    • 雑誌名

      日本音楽療法学会誌

      巻: 22 ページ: 127-133

  • [雑誌論文] 2型糖尿病患者の労働環境および合理化がHbA1cと食習慣に及ぼす影響2022

    • 著者名/発表者名
      大山 真貴子、岩永 誠
    • 雑誌名

      日本健康医学会雑誌

      巻: 31 ページ: 78~83

    • DOI

      10.20685/kenkouigaku.31.1_78

    • 査読あり

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公開日: 2023-12-25  

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