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2022 年度 実施状況報告書

加齢によるパラ言語情報の知覚変化に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 22K03193
研究機関豊橋技術科学大学

研究代表者

松井 淑恵  豊橋技術科学大学, エレクトロニクス先端融合研究所, 教授 (10510034)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード音声 / モーフィング / 模擬難聴
研究実績の概要

加齢によって起こる老人性難聴は、高周波帯域から聴力が低下する特徴を持つ。この老人性難聴によって、コミュニケーションに用いられる音声のうちいくらかの情報が欠落する可能性が考えられる。たとえば、声道形状には個人差があるが、その声道下部の形状の違いは4-5kHz付近の振幅スペクトルにあらわれることがわかっている。この個人性に関わる情報が聴力の低下によって利用できなくなることは十分に考えられる。つまり、老人性難聴によって話者を同定しにくくなる可能性がある、ということである。個人性のほか、感情がこもった時に声道形状や声帯音源波が通常時から変化することがあるが、この情報も高い周波数帯域に含まれていれば捉えられないこともありうる。
このような個人性、感情の知覚における老人性難聴の影響を調べることを目的として、複数の感情の音声や、複数の発話者の音声をモーフィングすることによって、感情や個人性をパラメトリックに制御できる音声を用意した。これらの音声が健聴者にとっても個人性や感情が段階的に変化すると感じられるかどうかの実験を実施した。音声の話者性を確かめる実験では、同定のために比較したい音声が異なる単語で呈示された場合、非常に同定されにくいことがわかった。また、個人差の大きい副鼻腔の影響を受けやすい鼻音の有無によって、同定・弁別の精度が異なるのではないかという仮説を検証したところ、それほど影響はないことが示された。また、話者の同定と弁別では判断の基準が異なるということが明らかになった。感情音声の実験では、プロではない複数名の感情音声を新規に収録し、この音声が確かに意図された感情を伝達できることを健聴者対象のオンライン実験で確かめた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では刺激の作成にモーフィング技術を利用するため、同じ内容(言葉)の発話音声を用意する必要がある。また、発話持続時間や韻律があまりにも異なる音声も、モーフィング時のノイズになる、あるいは同定・弁別実験で使用した際にアーチファクトとなる可能性があるため、収録時に統制する必要がある。このような要求を満たす音声の収録と、健聴者による実験を完了したことで、次年度の高齢者実験の用意ができた。

今後の研究の推進方策

2022年度に用意した音声刺激と実験手法を用いて、次年度は高齢者を対象とした実験に取り組む。伝染病等の蔓延が再度起こった場合は、モバイル再生機器とイヤフォンのセットを高齢者に貸し出す等の対応をすることを考えている。

次年度使用額が生じた理由

2022年度は音声の収録と調整、モーフィング作業、予備実験などに時間を使った。これらの作業は、すでにある機材と計算機で可能であったため、費用を温存することができた。コロナウイルス感染症の発生から高齢者実験が完全に止まっており、高齢者用の実験計画を立てるのに時間がかかったことや、年末から2ヶ月ほど大規模な空調工事により研究室を閉鎖せざるを得なかったことが重なり、予定していたより支出が抑えられた。
2023年度は複数回の高齢者の実験を実施することで、人件費の増加が見込まれる。より多い実験参加者を必要とする場合は、大規模のオンライン実験の手配を業者に依頼することも考えられる。録音レベルの校正のためのサウンドレベルメータの追加購入も検討している。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2023 2022

すべて 学会発表 (7件)

  • [学会発表] 音声モーフィングを用いた話者類似性判断と話者同定判断の調査: 発話単語の同異と鼻音の有無による影響2023

    • 著者名/発表者名
      内堀颯太, 河原英紀, 松井淑恵
    • 学会等名
      日本音響学会第149回(2023年春季)研究発表会
  • [学会発表] 日本語音声のモーフィングに対する性別判断: 心理測定関数による知覚特性の調査2023

    • 著者名/発表者名
      菅野聖真, 河原英紀, 松井淑恵
    • 学会等名
      日本音響学会第149回(2023年春季)研究発表会
  • [学会発表] 演技未経験者の感情音声の演技における台本の影響: 音響解析と主観評価による検討2023

    • 著者名/発表者名
      坂下尚史, 河原英紀, 松井淑恵
    • 学会等名
      日本音響学会第149回(2023年春季)研究発表会
  • [学会発表] 調波複合音の基本周波数の変調に対する発声の不随意応答: 階段状ピッチシフト実験との比較2023

    • 著者名/発表者名
      廖嘉慧, 河原英紀, 松井淑恵
    • 学会等名
      日本音響学会第149回(2023年春季)研究発表会
  • [学会発表] 基本周波数の周波数変調に対する発声の不随意応答:刺激音の種類・変調量による影響2022

    • 著者名/発表者名
      廖 嘉慧, 河原 英紀, 松井淑恵
    • 学会等名
      日本音響学会2022年秋季研究発表会
  • [学会発表] 演技未経験者の感情音声の演技発話における台本の影響2022

    • 著者名/発表者名
      坂下 尚史, 河原 英紀, 松井淑恵
    • 学会等名
      日本音響学会2022年秋季研究発表会
  • [学会発表] モーフィング音声を用いた話者の個人性知覚の調査: 鼻音の有無・発話文の同異による影響2022

    • 著者名/発表者名
      内堀颯太, 河原英紀, 松井淑恵
    • 学会等名
      日本音響学会聴覚研究会

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公開日: 2023-12-25  

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