研究課題/領域番号 |
22K03194
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
小野 健太郎 広島大学, 脳・こころ・感性科学研究センター, 助教 (30435870)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 知覚的体制化 / 同期タッピング |
研究実績の概要 |
当該研究課題では、知覚的体制化が知覚・運動処理の向上を促す心理・神経メカニズムの解明を目指した検討を目的としている。当該年度は、知覚的体制化が運動処理に与える影響を心理実験を用いて検証した。刺激が現れるタイミングに合わせて指でタッピングをする同期タッピング課題において、刺激の提示方法として一定の規則性を持った順番で提示することで知覚的体制化を促す条件と順番を決めずランダムな順番で提示する条件の二つを設定し、それぞれの刺激に対する同期タッピング課題を行った。刺激の出現タイミングとタッピングの時間的なずれとそのばらつきのデータを用いて、規則性を持つ提示条件とランダムな提示条件の比較を行ったところ、タッピングすべき音の提示間隔に依存する形で知覚的体制化の効果が表れた。タッピングすべき音の間隔が1秒以上と長い場合には知覚的体制化によって同期精度が向上した一方で、提示間隔が短い場合には反対に知覚的体制化によって同期精度の低下が見られた。刺激のモダリティが視覚の場合でも聴覚の場合でも同様な傾向が見られていることから、知覚的体制化が運動処理に与える影響は感覚モダリティを越えて見られることが示唆され、統合的なメカニズムが存在することが予想される。この結果については2022年心理学会にてポスター発表を行い、またNeuroscience lettersに論文を投稿して採択された。 この実験で得られた刺激提示間隔依存の効果については、実験で用いた知覚的体制化の方法がひとつであったため、この方法を採用したことが何らかの影響を及ぼしたことは否定できない。そこで、異なる種類の知覚的体制化の方法を用いてこの効果を検証する必要がある。当該年度の後半は、そのための準備および予備実験を行うことに費やした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、当該年度は同期タッピング課題を用いて知覚的体制化が運動処理に与える影響を検討することを想定していたが、実験準備が想定よりも早く進み、前半のうちから実験を始めることができた。そのため、想定していなかった初年度での学会発表および論文化が可能となった。また、次の実験についての予備実験も始めることができ、当初の計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の計画としては、知覚的体制化の刺激提示間隔依存効果について、知覚的体制化の方法を変えて検討することを予定している。また、知覚的体制化が運動処理に与える影響だけでなく知覚処理に与える影響を検討するために、研究分担者を追加することを予定している。研究分担者は音の知覚処理に関わる心理メカニズムの研究の経験が豊富なことから、体制化が知覚処理に与える影響について詳細な検討が可能になることが期待できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度の計画では学会参加に関わる費用計上をしなかったが、研究の進捗が予想以上に順調であったため、学会で研究成果の発表をすることにし、それにより減少した実験参加者への謝金不足を補うために前倒し請求を行った。しかしその後実験用PCの不調により実験を中断する状況が生じ、余剰分が生じることになった。この余剰分はそのまま次年度(2023年度)に実験参加者への謝金として使用する予定である。
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