研究課題/領域番号 |
22K03207
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
池上 将永 旭川医科大学, 医学部, 准教授 (20322919)
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研究分担者 |
高橋 雅治 旭川医科大学, 医学部, 教授 (80183060)
空間 美智子 京都ノートルダム女子大学, 現代人間学部, 准教授 (00623406)
片山 綾 大阪公立大学, 大学院文学研究科, 客員研究員 (30881106)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 衝動性 / 遅延割引 / 注意欠如・多動症 |
研究実績の概要 |
衝動性(impulsivity)は、注意欠如・多動症(ADHD)等の病態理解において中核となる心理学的概念である。衝動性は多次元的な心理・行動特性であるとされており、個人の衝動性を正確に把握するためには、各次元に対応した行動課題を用いる必要がある。本研究は、衝動性を構成する複数の次元を評価する包括的なパッケージプログラム(多次元衝動性検査)を開発することを目的としている。2022年度においては、先行研究に基づいて、衝動性を測定する行動課題として妥当性の高いものを選定し、また必要に応じて新たに行動課題を作成することが目標であった。市販の実行機能課題プログラム(CANTAB)の中から、衝動性の各次元を代表する行動課題を選定し、動作を確認するとともに、新たに遅延割引を測定するためのプログラムを作成した。これらのプログラムの組み合わせによって、衝動性の各次元を行動的に測定するための環境が構築された。また、遅延割引の認知神経科学的基盤について、NIRSを用いた研究を行った。遅延割引は、選択行動における衝動性を予測する指標であるため、その神経学的基盤を理解することは重要である。研究の結果、健常な成人が遅延割引課題を遂行しているときの前頭前皮質活動の特徴が把握された。また、遅延割引率の個人差が左背外側部の活動と相関すること、加えて、反応抑制に関わる運動衝動性の個人差が右前頭極の活動と相関することが確認された。この結果は、異なる次元の衝動性が別の神経基盤を有することを示唆しており、多次元的な衝動性測定の必要性が認知神経科学的な観点から支持された。この研究成果は、Brain Sciences誌に掲載される予定である(2023年5月1日受理)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度の計画として、衝動性を測定する行動課題として妥当性の高いものを選定し、必要に応じて新たな行動課題を作成することが予定されていた。新たに作成した遅延割引測定課題には改善の余地があり、今後の進捗を早める必要がある。具体的には、測定対象者の年齢に応じたバリエーションを加えるとともに、検査としての妥当性をさらに確認していく必要がある。一方、上記と並行して、2022年度には衝動性の多次元性に関する認知神経科学的基盤を検討する予定であった。この点はほぼ予定通り進捗し、結果は研究成果として学術雑誌に公表される予定である。以上から、現在までの進捗状況は「おおむね順調に進展している」と判断された。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、選定および作成された行動課題のパッケージを用いて、行動データの収集を開始する。まず、健常成人および定型発達児を対象として測定を行い、衝動性の各次元と個人の行動特性の関連性を明らかにする。行動測定に加えて、自己評価式質問紙も用いて幅広く検討を行う予定である。2023年度後半から2024年度にかけては、ADHD児を対象とした衝動性検査のデータ収集を開始する。定型発達児との違いやADHD症状との関連性に着目し、検査結果を詳細に分析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験制御、データの保存、および、データの解析に使用するためのノート型パーソナルコンピュータおよびタブレット型コンピュータ(iPad)を購入する計画であったが、現有の装置で予備的に環境を構築して研究を進めた。今後、実験および測定環境が拡張されるため、次年度に繰り越してこれらの購入費用として使用する計画である。
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