研究課題/領域番号 |
22K03219
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研究機関 | 神戸女子大学 |
研究代表者 |
佐伯 恵里奈 神戸女子大学, 心理学部, 准教授 (90424746)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | タスクセット |
研究実績の概要 |
令和5年度は課題手掛かりの対応と準備時間の長さを操作した実験をもとに、課題セットの活性化の様相の違いについてDiffusion modelを用いた検討を行った。課題セットの切り替えに伴うコスト(スイッチコスト)は、課題手掛かりのタイプの操作や手掛かりから刺激までの提示間隔を操作することで減少することが知られている。具体的には、手掛かりに基づいて課題を遂行することが求められた場合、恣意的な手掛かりよりも言語的な手掛かりが呈示された方が反応は速く、また、課題手掛かりから次の刺激呈示までの間隔が長い方が、短いときよりも反応が速くなる。どちらの場合においても、タスクセットを効率的に活性化できるため反応が促進されると考えられているが、言語的な手掛かりによるタスクセットの活性化は外的な要因である一方、準備時間を利用したタスクセットの活性化は内的な過程であり、タスクセット活性化の様相には違いがあると考えられる。そこで、本研究ではDiffusion modelを用いて、これら2つの活性化過程における様相の違いについて検討を行った。その結果、反応時間においては言語的な手掛かりと準備時間の延長によるスイッチコストの減少は同程度であることが示されたが、Diffusion modelingの結果は、言語的な手掛かりは情報処理の効率を表すdrift rate(v)を高めることで、一方、準備期間は刺激の符号化・運動処理を反映するnondecision parameter(t0)を小さくすることで反応を促進しているという違いが示された。このことから、反応時間を指標にした分析では違いが見いだされなかったが、タスクセットの活性化が内的になされる場合と外的になされる場合で活性化の様相が異なると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度に引き続きDiffusion modelを用いた新たな分析を実施した。また、予備実験において問題となった点を修正し、データの取得を進めているため。
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今後の研究の推進方策 |
実験課題は同一だが、実験設定によりタスクセットの形成の難易度の操作ができる課題を考案し、現在、この課題を用いてタスクセットの性質の違いが遂行成績に与える影響を検討している。引き続き、タスクセット表象の性質が遂行成績に与える影響についての認知実験を実施し、データを取得する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験補助者と実験日程の予定があわず、実験補助業務が予定していた時間よりも少なくなったため。また、国際学会での成果発表を予定していたが、質の高い発表に向けて実験データの収集がより必要と考え、参加を見送ったため。 実験日程、実験補助者とのスケジュール調整を行い、効率的に実験データを収集する。
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