研究課題/領域番号 |
22K03223
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
深澤 知 山形大学, 理学部, 准教授 (20569496)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ガロア点 / 自己同型群 / ガロア群 / 射影 / 正標数 / 有限体 / グラフ理論 / ガロワ点 |
研究実績の概要 |
代数曲線に対するガロア点配置の一般論の構築に取り組み、ガロア点理論を核とした分野横断研究を推進した。平面曲線に対して、射影平面内の点からの射影が誘導する関数体の拡大がガロアであるとき、射影の中心点をガロア点という。令和5年度は次の2つの成果があった。 (1)「ガロア点を2つもつ」という性質が商曲線に落ちるか、または商曲線の立場からは割る前の曲線の(「ガロア点を2つもつ」という)性質から落ちてきているか、を調査した。特に、その性質が商曲線に落ちるときに上の曲線を ancestor、下の曲線を descendant と呼び、また付随して maximal, minimal といった概念を導入した。具体的成果として、ガロア点を2つもつ曲線として認知されている Fermat 曲線と高橋曲線について descendant を決定した。例えば Fermat 曲線の descendant は Fermat 曲線に限定される。特に、素数次の Fermat 曲線はこの意味で minimal である。 (2)三枝崎剛氏(早稲田大学)との共同研究により、グラフに対するガロア点を導入し, 完全グラフのガロア点による特徴づけを与えた。2007年、Baker-Norine は代数曲線との類似性を有限グラフに見出し、グラフに対する Riemann-Roch の定理を証明した。そこでは、グラフ上の因子とその線形系の理論が代数曲線論の類似として展開されている。また、代数曲線の自己同型群の位数に関する Hurwitz 上限に対応する結果のために、Corry によって harmonic group action が導入されている。本研究ではこれらの道具(グラフ上の因子、線形系、harmonic group action)を利用して、グラフに対するガロア点を導入することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度の上記(1)(2)の研究成果は、ガロア点配置の一般論と分野横断研究、両方の内容に関する進展である。 上記成果(1)の「ガロア点を2つもつ」という性質に関する descendant という概念は、この性質の根本を問い直す方法のひとつを明示している。ガロア点配置の一般論の解析につながる研究成果であり、ガロア点研究の新しい方向性を見出したものでもある。 上記成果(2)の「グラフに対するガロア点」に関する成果により、ガロア点が代数幾何だけでなく、グラフ理論での研究対象になったことを意味する。ガロア点が代数幾何をいよいよ本格的に飛び出した、と言える。「分野横断研究」というねらいを正しく現実に実行したと言える。 いずれの成果も今後研究するべき領域を明らかにしたという意味で、研究成果のみならず研究思想という意味においても、意義があると考えられる。以上を総合的に評価し、「おおむね順調に進展している。」に分類した。
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今後の研究の推進方策 |
ガロア点研究とそれを核とした分野横断研究がいずれも順調に進展しているため、それらの拡張を重要な方向性の2つとしたい。前年度に標数零で解決した「外ガロア点がトライアングルを成す状況の整理」を正標数でも行いたい。また、同様の問題を内ガロア点についても考えたい。分野横断研究については、前年度に代数幾何符号の構成法、今年度にグラフのガロア点理論、を発展させた。それら2点についての研究を進展させたい。これら2点について大きな成果が出ているのでそれらを中心として研究を進めるが、ガロア点と有限数学の他の対象(有限体上の関数、有限幾何など)との関係性についても研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルスの状況が改善し、国内旅費に使用しようと考えたが、学内個人研究費で賄えてしまったために直接経費を使用しなかった。次年度は、国内旅費を中心に使用したい。
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