研究課題/領域番号 |
22K03233
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
松本 詔 鹿児島大学, 理工学域理学系, 准教授 (60547553)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 対称群 / ヤング図形 / 既約指標 / ランダム行列 / Weingarten calculus |
研究実績の概要 |
本研究課題は、ランダム行列とランダム分割、およびそれらに関連した問題に対し、組合せ論および表現論の視点に基づいた研究を行うことを目的としている。とりわけランダム行列分野では、これまでの延長として、Weingarten calculus の発展、例えばその広い分野への応用を模索する。 初年度である2022年度は、Weingarten calculusを用いて量子情報理論に関する新しい結果を得た。量子情報理論におけるquantum marginal problemは、テンソル空間に作用する一様に分布するランダム・エルミート行列に対し、その部分トレースの確率分布について問うている。今回の研究では、部分トレースの行列成分の積の期待値を、Weingarten calculusを用いて具体的に計算した。パラメータが多く、やや複雑な形ではあるが、最終的に期待通りの形に定式化できた。通常のテンソル積だけでなく、ボゾン・フェルミオンにそれぞれ対応する対称テンソル・交代テンソルの場合も扱ったが、残念ながら平易な形に帰着できなかった。次元の小さい場合の例を観察すると、計算の仕方が悪いというより、今回の問題設定では平易な形になり得ないことを示唆していた。また行列のサイズが十分に大きいときの、大数の法則についても記述できた。2つのベクトル空間のテンソル積を考えているので、2つの次元のパラメータm,nがあり、その比c=lim(m/n) が重要となる。以上はColin McSwiggenとの共同研究である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題に沿って、ランダム行列に関する新しい論文を執筆することができた。一方、ランダム分割に関する研究は大きな進展がなく、次年度以降に持ち越された。
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今後の研究の推進方策 |
まずはWeingarten calculusの低次元での取り扱いについて研究する。Weingarten calculusは行列成分の多項式積分の計算であるが、通常、次元(行列のサイズ)が大きく、被積分多項式関数の次数が低いところで扱う。そうでないとき、すなわち低次元・高次数の場合は、必要とするWeingarten関数の形が変わり、やや扱いづらい。この扱いづらさの回避を目標とする。 また年度の後半では、2022年度では特に進展のなかったランダム分割に関する問題も再び取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、対面開催される研究集会がまだ多くはない。だが、2023年度は多くの研究集会が以前のような対面の形で開催されることが期待される。研究集会への発表や情報収集の出張旅費として使用する。
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