研究課題/領域番号 |
22K03254
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
伊藤 浩行 東京理科大学, 理工学部数学科, 教授 (60232469)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 正標数代数曲面 / 特異点 / 群スキーム商 / (準)楕円曲面 |
研究実績の概要 |
本研究は正標数代数多様体の病理現象の解明に必要不可欠である、有限群の野生的作用の理解を有限群スキームによる作用の立場から研究し、病理的現象を包含する一般理論の構築を目指すものであり、3つの目的を掲げ研究を行っている。 以下、初年度である2022年度に進捗のあった内容について述べる。 目的の一つに、有理二重点をモデルとし、各特異点を有限群スキーム商や導分商として捉え直すことで、その「表現論」の構築、そしてMcKay対応の理解へと繋げるものがあった。今年度は特に、標数をpとしたとき、位数がpである有限群による作用の商と長さがpである加法的有限群スキームの作用による商を変形で繋げ、tautではな特異点を記述することでより多くの正標数特有の病理現象の解明にあたった。特異点に限らず準ファイブレーションの存在などの幾何学的現象などの多くの病理現象では、背後にこのような野生的作用と群スキームによる作用があり、全容の解明には遠いが一つ一つ背後にある群および群スキーム作用を具体的現象を通して理解をしている。また、これらの作用を統一的に扱うためには、作用を(擬)導分による商として記述しその変形理論を構築する必要があるが、これまで入られた変形、すなわち導分作用から(擬)導分作用への持ち上げについては微分方程式を解かなければならず標数が2の場合の結果以外には、全ての標数に有効であるような完全に満足のいく結果には至っていない。しかしながら、その前提条件となる加法的群スキーム作用からきまる導分の標準形については、年度途中から開始したに三井氏との共同研究により大きな進展を得ることができている。局所2次元の正則環に対する加法的導分の標準形について標数が2以外の場合に必要十分条件に近い条件がもとまっている。 目的の二つ目として、これらの結果を特別な多様体へ適用するものがあったがこれについては進展はまだである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
数学の研究においては直接の対話や議論が必要不可欠であり、オンラインでの共同研究にはどうしても限界がある。 今年度は後半から対面でのやり取りが可能となり、研究協力者との共同研究を本格化させることができ数年ぶりの大きな研究の進展があった。 本研究の3つの目的に掲げたそれぞれの項目すべてに進展があるわけではないが、話題を限定して集中的に行った共同研究によって、全体としては順調に進展していると考える。 23年度は是非更なる進展を得て、論文として発表したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
22年度後半から進展を得た三井氏との共同研究である、加法的導分の標準型の決定、その持ち上げ及び変形理論については早急に満足のいく結果まで持っていき発表したいと考えている。 また、齋藤氏と行ってきた準楕円曲面のMordell-Weil群に関する研究や等特異点軌跡に関する研究についても論文執筆中であるので、早急に完成させ発表したいと考えている。 加えて、準ファイブレーションに関する新たな知見として、高種数ファイブレーションを群スキーム作用による商として構成する方法が提案され大きな新展開が見込まれるため、現在急ぎ研究を開始したところである。
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次年度使用額が生じた理由 |
22年度後半から新型コロナウイルス感染症の影響が緩み、対面での研究活動が活発になったが、前半は21年度までと類似の状況であったため研究発表や資料収集、共同研究に関わる旅費に相当する部分が繰越となった。23年度は従前の状況に戻ることが予想され、またバイアウトによる負担軽減によって研究時間の創出も想定されるので、より活発な研究活動を行なっていく。
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