研究課題/領域番号 |
22K03255
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
野田 工 日本大学, 工学部, 教授 (10350034)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | Riemannゼータ関数 / 母関数 / 保型形式 / Poincare級数 |
研究実績の概要 |
本研究においては,尖点形式に由来する数論的母関数の構成が目的である。申請者はHankel路積分表示を持つゼータ母関数をこれまで研究開発してきた。尖点形式に由来するゼータ関数は, 合流型超幾何関数を係数にもつ場合等も含めてRiemannゼータ関数等の母関数表示を自然に持つことが観察されている。尖点形式の多重化や一般Poincare級数などの具体的な積分表示・変換公式等の導出をも目標とする。 令和4年度は,モジュラー群上の正則Poincare級数に由来・含有されるゼータ関数を定義した。このゼータ関数は指数型Riemannゼータ関数の母関数の一般の場合となっている。この指数型Riemannゼータ母関数について,Hankel路積分表示,解析接続, 関数関係式, 変換公式等を導出した。 指数型ゼータ母関数は歴史的にHardy--Littlewoodの三角関数を係数に持つ調和級数の研究にその源があり,その積分平均等の漸近挙動がBessel関数を用いて表示されることが研究されてきた。また,指数型母関数の漸近挙動の研究としてはChowla--Hawkinsを源にして,最終的にVoronoi型和公式が桂田昌紀によって与えられていた。本研究の主結果の一つである積分表示から従う変換公式は,正則Poincare級数に由来するゼータ関数を指数型Riemannゼータ母関数とみなした場合,桂田氏の結果に一致するものである。一方,関数関係式からは自然な形で正則Poincare級数のFourier級数展開の別証明が得られる。これらの結果により,本研究対象である指数型Riemannゼータ母関数が基本的かつ重要なゼータ関数であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
モジュラー群上の正則Poincare級数に関係するゼータ母関数の研究同様に,非正則Poincare級数に含有される指数型ゼータ母関数の研究を進めた。しかしながら変換式が複雑になるため既存のFourier級数展開式とは別表示の形となっていて,直接の同値関係が得られていない。このため非正則の場合についてはさらなる検討が必要と考えられるため,最終的な結論には到達していない。
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今後の研究の推進方策 |
非正則Poincare級数に含有される指数型ゼータ母関数の研究を進めつつ,別のゼータ母関数をも研究対象として進めていきたい。具体的にはDirichlet級数型の母関数や一般超幾何関数の場合への拡張を検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会出張が出来なかったことによる。金額的には2000円未満の差異であるので,翌年度の使用は予定通り行う。
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