研究課題/領域番号 |
22K03258
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
柳川 浩二 関西大学, システム理工学部, 教授 (40283006)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | グレブナ基底 / Specht ideal / Li Li ideal / 普遍グレブナ基底 |
研究実績の概要 |
正整数 n の分割λに対し、対称群の表現論で重要な Specht module V_λは体 K 上の多項式環 S=K[x_1, ..., x_n]の部分空間と見なせる(見なし方は一意でないが最も標準的な方法で同一視する)。V_λが生成する S のイデアル I_λをSpecht ideal という。Haiman と Woo は、I_λが常に被約であることを証明した他、その普遍グレブナ基底を構成した(ただし未発表)。代表者は大杉英史氏、村井聡氏と共同で上述の Haiman-Woo の結果の別証明を得て、22年度に査読付き学術雑誌に発表した。なお、「普遍グレブナ基底」とは、変数 x_1, ..., x_n はそのままに S の任意の項順序に対してもグレブナ基底となっているものを指す。 本年度は、上記論文の「続編」的なものとして、当時関西学大学大学院生であった Ren Xin 氏との共著論文が、査読付き学術雑誌から発表された。この内容について、少し詳しく述べる。 Li-Li の古典的論文 "Independence numbers of graphs and generators of ideals" に現れるイデアル(以下、"Li-Li ideal"と呼称)は、Specht ideal と共通例も多いが、一方が他方を含むことはない。たとえば Li-Li ideal は必ずしも被約でない。Ren 氏との上述の論文では、Specht ideal と被約 Li-Li ideal の共通の一般化を扱っている。これらイデアルが、x_1 が最大もしくは最小となるような項順序に対し、Specht ideal の場合と同様のグレブナ基底を持つこと示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究自体の進捗状況はまずまずであったが、本年度は体調不良で、海外出張や国内であっても合宿形式の研究集会への参加は控えており、成果に比して(口頭)発表が極めて低調であった。
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今後の研究の推進方策 |
「研究実績の概要」欄で述べた Ren氏との共著論文において、研究対象となったイデアルのグレブナ基底の普遍性は示されていない。計算機実験の結果を見る限り普遍グレブナ基底であることが強く示唆されているので、引き続き氏と共同で、これの証明に取り組みたい。 また、組合せ論とグレブナ基底と言う点で繋がる本研究課題の次なる問題として、simplicial poset の face ring の定義イデアルについて、米子高専の柴田孝祐との共同で研究することを考えている。この内容は、前研究課題の一環として、以前から一定以上の成果が蓄積されていながら、柴田氏の多忙さから本格的な始動が大幅に遅れていたものである。時間の経過や研究(予定)内容の変化も鑑み、本研究課題の一環として位置付け直し、24年度こそ本格始動させたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
支給額の大半を旅費に使う計画であったところ、22年度から23年度にかけて体調を崩してしまい、海外出張、および国内であっても体力的負担の大きい合宿形式の研究集会への参加を全面的に控えたことによる。国内の共同研究者への訪問は積極的に行おうとしたが、先方も多忙で都合が合わないケースも多く、希望よりも出張回数は少なかった。 体調は復調しつつあるので、24年度は積極的に(成果発表などの為の)出張を行いたい。
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