研究課題/領域番号 |
22K03259
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研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
菊田 俊幸 福岡工業大学, 情報工学部, 准教授 (60569953)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | Siegelモジュラー形式 / テータ級数 / 法p特異モジュラー形式 / 合同 |
研究実績の概要 |
本研究の主な目的の一つは、Siegelモジュラー形式の場合に定義される「法p特異モジュラー形式」の具体的構造の解明であった。前年度までの研究により、次数やレベルに関してかなり一般の場合において、法p特異モジュラー形式はテータ級数の一次結合と法pで合同になることを示した。しかしながら、法とする素数としては有理素数の場合のみが考えられており、したがって、本質的にはモジュラー形式の指標が2次の場合という制限が設けられていた。 当該年度における研究では、2次とは限らない指標付のいわゆるNeben型の法p特異モジュラー形式を調べることを念頭に置いて、Siegelモジュラー形式の合同について調べた。具体的には、Neben型の2つのSiegelモジュラー形式が、素イデアルを法として互いに合同ならば、重さと指標に関してある合同関係が成り立つことを示した。この結果を応用して、pが有理素数のとき、2次でない指標のNeben型の法p特異モジュラー形式は存在しないことを示した。また、法とするpを有理素数ではなく素イデアルとすれば、2次でないNeben型の法p特異モジュラー形式が存在することを示した。これについては、竹森によって詳しく調べられていたEisenstein級数を用いて、具体例を構成することにより示した。 以上に挙げられた研究成果は、全てドイツ、マンハイム大学のSiegfried Boecherer氏との共同研究によって得られたものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度までの研究により、本研究の主な目的であった法p特異モジュラー形式の具体的構造の解明と、そのp進Siegel Eisenstein級数への応用のどちらも大半が達成できている。これにより、当該年度の研究では、残された細部の研究に留めることができているため、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、これまでには考慮していなかったベクトル値の場合の法p特異モジュラー形式や、これまでの研究では除外されていたp進Siegel Eisenstein級数の未解明の部分を詳しく調べる。これまでのSiegfired Boecherer氏との共同研究により、既に解決方策が練られており、これを基に議論していく。共同研究者であるマンハイム大学のSiegfired Boecherer氏や、国内の関連の研究者の招聘や訪問を複数回行う予定である。また、関連分野の研究集会に参加し、情報収集を行いながら研究を推進する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は、当初の想定のよりも順調に進んでおり、これまで理論的研究に専念することができている。そのため、本研究開始年度に行う予定であった数値実験のための環境整備は、これまでほとんど行っておらず、これが次年度使用額が生じている理由となっている。次年度に専門図書の購入、国内外への出張、共同研究者の招聘、必要に応じた数値実験のための環境整備などに使用する予定である。
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