研究課題/領域番号 |
22K03261
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中村 郁 北海道大学, 理学研究院, 名誉教授 (50022687)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | アーベル多様体 / モジュライ / コンパクト化 / アーベル多様体の退化 / ネロン・モデル / ネロン・モデルのコンパクト化 / ボロノイ多面体 / fppf層 |
研究実績の概要 |
アーベル多様体のモジュライのコンパクト化に関連して、この1年間はネロン・モデルのコンパクト化の研究に取り組んだ。共著論文原稿は一旦完成して投稿したが、付帯条件のため掲載には不十分な成果、との評を得たので、その後の研究で付帯条件は不要となり、ほぼ最終的な改良を得た。剰余体の標数への制限はなくなり、また、モデルの一意性も証明できた。論文は前半と後半の2部に分け、前半部分は完全退化の場合を扱い、後半は部分退化の場合を扱う。前半は共著として完成しており、後半は筆者の単著とし現在執筆中である。完備離散付値環上のアーベル多様体$G_eta$に対してネロン・モデルが一意に定まることはよく知られている。研究期間に著しく進展したのは、このネロン・モデル$\cG$ のコンパクト化である。主要結果は以下のとおりである:$\cG$が半安定ならば、 $\cG$のコンパクト化$(P,\cN)$で次の性質(i)-(iii)を持つものがただ一つ存在する:(i) 偏極が3次的 (ii) Cohen-Macaulayスキームで、(iii) $P\setminus\cG$が余次元2。 前半部分で、完全退化の場合に退化データを構成し、Mumfordの構成方法を適用してコンパクト化を構成、Voronoi 多面体によってコンパクト化の具体的な記述を与えた。後半部分では、部分退化の場合に退化データを構成し、Mumfordの構成方法を適用する。後半の本質的に重要な部分は完成しているが、証明と構成の細部、および関連する結果の完成にもうしばらく時間を要する。並行して以下を証明し、論文を準備中である:fppf位相で定義された前層は帰納的極限により層とすることができる。fppfでの通常の帰納的極限は集合論的に問題があり、その点を克服した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アーベル多様体のモジュライのコンパクト化に関連して、この1年間はネロン・モデルのコンパクト化の研究に集中して取り組んだ。ネロン・モデル$\cG$が半安定ならば、$\cG$の望ましいコンパクト化$(P,\cN)$がただ一つ存在することが、付帯条件のない望ましい最終的な形で、証明できた。一意性は予想以上の成果である。一方、モジュライのコンパクト化の研究では、完全退化の場合はほぼ研究は完成したが、部分退化の場合の正確な執筆は困難な問題で慎重を要する。上記ネロン・モデルのコンパクト化の執筆経験は、fppf前層の層化の存在の証明と同様に、今後の研究にとって重要である。
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今後の研究の推進方策 |
まず、ネロン・モデルのコンパクト化の研究を完成させる。この方向でもいくつか魅力的な予想はあって、その解決は興味深いのだが、本来の目標である、アーベル多様体のモジュライのコンパクト化の研究の完成を急ぎたい。すでに研究ノートレベルで完成している部分を 書き上げて、そのあと、ネロン・モデルのコンパクト化での経験を生かして、部分退化の場合に論文を完成させたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響で出張しませんでした。来年度にコロナの問題のない範囲で研究連絡をする予定です。
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