研究課題/領域番号 |
22K03279
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
古畑 仁 北海道大学, 理学研究院, 教授 (80282036)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 統計多様体 / 統計はめ込み / 部分多様体 |
研究実績の概要 |
等質性を有する統計多様体およびその部分多様体論の幾何学的基礎を構築するために,本年度は,双全臍的および双極小統計はめ込みの特徴づけに関する研究を実施した結果,以下の成果が得られた. リーマン幾何学における等長はめ込みが重要な概念であることは疑う余地がないし,極小等長はめ込みがさらに興味深い研究対象になっていることも明らかである.統計多様体の幾何学において,等長はめ込みに対応する概念は統計はめ込みとしてすでに自然に定式化されているが,極小等長はめ込みに対応する概念は明らかとは言えない状況にある.本研究では,それを「双極小統計はめ込み」と定式化し,それが自然に現れる現象をいくつか調査した.双極小統計はめ込みとは,アンビエント空間がもつアファイン接続に対して定まる第2基本形式のトレースが消えるだけではなく,双対アファイン接続のそれに対しても同様なことがなりたつ場合を指す.たとえば,正則統計多様体や佐々木統計多様体の不変部分多様体は,双極小統計はめ込みと理解することができる.また,前年度の研究成果を用いて,与えられた統計多様体はある種の曲率が正となる点を持てば,その近傍から標準的な統計多様体への双極小統計はめ込みが存在しないことを示すことができる.これはユークリッド空間の曲面論において,ガウス曲率が正となる点があれば極小曲面ではありえないことに対応する.これらの成果を論文として発表した. また,11月2日から4日まで,北海道大学において,「ミニワークショップ統計多様体の幾何学とその周辺 (14)」を開催した.多くの研究者および学生が参加し,本研究のための情報収集のみではなく,関係分野の交流の場として機能した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
等質性を重視した研究としては不十分ではあるもののの,上記の通り,部分多様体論の幾何学的な基礎付けという観点からは進展している.今後その具体例を構成する際に,等質性は重要な役割を果たし,当初の計画に沿う形になると予想される.
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今後の研究の推進方策 |
現在進展している部分の研究を継続する.双極小統計はめ込みについてはある種の変分問題の解であることがわかるなど,新たな観点からの進展があるので,それを大きく取り入れる.
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次年度使用額が生じた理由 |
出張予定の研究集会について,オンラインで参加することになったため,次年度使用額が生じた.出張時の経費が高騰していることを考慮すると次年度に有効に活用できると思われる.
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