研究実績の概要 |
本研究の大きな目的は,多様体上の幾何構造に関する「幾何学的」研究と「トポロジー的」研究をの関連を追求することである.2023年度に行った研究では,(2,3,5)-Cartan接分布構造とそれに関連する幾何構造に関して考察をした. (2,3,5)-Cartan接分布構造とは,まず5次元多様体上の階数2の接分布構造である.すなわち,5次元多様体上の各点に2次元の接部分空間を対応させる接分布構造である.そして,Lieかっこ積という方向微分を考えると可能な最大の増大をして,2回でベースの多様体の次元に到達するものである.これは,例えば机上を転がるボールのモデルとして現れる構造である.この構造は,これまでに既に考察した構造のひとつである(3,5)接分布と呼ばれる幾何構造をその一部分に含むとみなせる. 特に,閉多様体上での構造の存在や分類は微分トポロジーにおける自然な興味である.(2,3,5)-Cartan接分布構造に関して,5次元閉多様体で「形式的Cartan構造」を持つことが存在の必要十分条件であることが分かった.また分類に関して「形式的Cartan構造」としてもホモトピー分類と一致することが分かった.ここで形式的構造とは,5次元多様体の接束の部分束の系列とその上のいくつかの2形式で表される. すなわちこの形の研究は,多様体上の幾何構造が多様体の位相的な性質に影響することを意味している.さらに,トポロジーと微分幾何学の相互作用による双方の発展のみならず,制御理論への寄与も期待できる. そして,2023年度中には研究対象を関連する他の接分布構造へ拡大させている. 研究の一部は国内外の研究者たちとの共同研究として進めている.
|