研究課題/領域番号 |
22K03313
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
小林 毅 奈良女子大学, 自然科学系, 教授 (00186751)
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研究分担者 |
村井 紘子 奈良女子大学, 自然科学系, 准教授 (40456843)
張 娟姫 奈良女子大学, 自然科学系, 准教授 (90708348)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | Heegaard分解 / 橋分解 / 折り紙 / 位相的データ解析 / 応用トポロジー |
研究実績の概要 |
本研究は二つの観点を持っている. それぞれについて実績の概要を述べる. 観点1では「大域的構造のなす空間」という視点から三次元多様体, 結び目・絡み目の橋分解の研究等に関係した研究を推し進める,としているがこれに関して3次元多様体内の絡み目の(strongly)keen bridge分解と呼ばれる bridge分解に関する研究を継続して行った.2023年度は前年度までの研究の議論を精密化し,成果をまとめた論文を学術誌に投稿した. また3次元球面内の結び目・絡み目の橋分解に関する研究を継続して行った. これらの研究はこの分野の研究の進展にとって重要な事実の指摘が含まれていると考える. また折り紙数学において,ユークリッド平面内の領域Pからユークリッド空間への折り状態(folded state)と,Pから折り状態への折り動作(folding motion)に関する研究を行った. Pが円環に同相な閉集合の場合に,Pからf(P)への折り動作が存在しないような折り状態の存在を,Pの境界が成す絡み目の不変量を用いて示した.これは折り紙数学の研究に於いてトポロジー,特に結び目理論を適用したものとして意義深いものであると考えられる. 観点2では低次元トポロジーの研究に機械学習の観点を取り入れるとともに, 位相的データ解析等に新しい研究のフレームワークの 提案,応用トポロジーの発展に寄与するとしているが, これに関してはGabrielsson-Carlsson による研究(:畳込みニューラルネットワーク内の畳込み層の中のフィルターの集合に適切な距離を入れそれが定める位相によって定まるフィルターの集合がなす形に関する研究)に結び目理論を導入した定式化を与え,その有効性を確かめた. これにより観点2の研究に具体的な提案ができたと考える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は二つの観点を持っている. それぞれについて実績の概要を述べる. 観点1では, 小林, 張は3次元多様体のkeen Heegaard splitting に対応する概念として, 3次元多様体内の絡み目の(strongly)keen bridge 分解を定義し, そのような bridge splittingが存在することを井戸絢子氏との共同研究で証明した. この結果を論文にまとめ,専門誌に投稿した.またこの結果の拡張に関して共同研究を継続して行った. 以上から想定通りに研究は進展していると認識している. また小林,張は3次元球面内の結び目・絡み目の橋分解の同値性に関して, 高尾和人氏, 小沢誠氏との共同研究で所謂橋分解には二つの解釈が存在することを注意しその違いを明らかにする研究を継続して実施している. これについては当初想定した通りの研究が進んでいると評価している. また村井は展開図が実際に折れることの可能性判定に関連してユークリッド平面内の領域Pからユークリッド空間への折状態(folded state)と,Pからfolded stateへの折り動作(folding motion)を対象とする研究を行った.Pが円環に同相な閉集合の場合に,Pからf(P)への折り動作が存在しない例があることを,Pの境界が成す絡み目の不変量を用いて示した. 視点2の観点から, 小林はGabrielsson-Carlsson による研究(:畳込みニューラルネットワーク内の畳込み層の中のフィルターの集合に適切な距離を入れその距離が定める位相によって定まるフィルター全体がなす形に関する研究)に結び目理論を利用した定式化を導入し,その有効性を確かめるための実験を行った. これにより観点2の研究に対する具体的な提案ができたと考える. これは当初想定した通りの研究が進んでいると評価している.
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今後の研究の推進方策 |
小林と張はkeen Heegaard splittingに加え, keen bridge splittingに関する研究を通して,曲線複体内のHempel距離を実現する測地線に対する理解が深まった.この研究で用いた手法は今後weakly keenなHeegaard splittingに関する研究に役に立つと考えているのでこの方向で研究を推し進めて行きたい. また現在行っているbridge splitting と bridge decompositionという2種類の橋分解に関する研究に関して,例えば現在2成分以上の絡み目に関して知られているが,結び目(1成分の絡み目)についてはまだ解っていない事実がある等まだ考察すべき課題が多数存在するので, 引き続きこれに取り組みたい. また村井はユークリッド平面内の領域Pからユークリッド空間への折状態(folded state)と,Pから折状態への折り動作(folding motion)を対象とする研究を行ったが,この研究は折り紙の研究に結び目・絡み目理論を適用したものであり、その意義は大きいと認識している.まずは現在の結果を研究集会などで公開するとともに、今の結果を精密化する方向でこの研究をさらに進めていきたい. 視点2の観点については,小林のGabrielsson-Carlsson の順伝播型ニューラルネットワークの畳み込み層についての研究を拡張した研究をさらに推し進めるために,2023年度に得られた結果を研究集会などで公開して他の専門家の意見を収集しそれらを参考にさらに研究を推し進めたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度研究分担者の村井はいくつかの研究集会に参加する予定であったが、2023年に足を骨折しこれらの計画が遂行できなかったために次年度使用となってしまった.2024年度に関しては積極的に研究集会に参加して、実施できなかった活動を行う予定である。
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