研究課題/領域番号 |
22K03321
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
吉岡 朗 東京理科大学, 理学部第二部数学科, 客員教授 (40200935)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | star積 / 変形量子化 / 可換変形および非可換変形 / star指数関数 / 量子系の簡約 / 変形量子化の応用 |
研究実績の概要 |
変形量子化を、変形パラメータに関する形式的べき級数ではなく収束級数に対して考えることにより、形式的べき級数では捉えられないものを扱うことができる。例えば可換な変形、順序表示の変換を一般化した相互変換から意味ある情報を引き出すことなどがある。この研究では収束する級数による変形量子化を調べている。通常の積から変形量子化の方法により得られる結合律をみたす積を変形量子化の提唱者たちに従いstar積と呼ぶ。これに関しいくつかの結果を得た。 log(1+z)の展開式の収束半径は正であるが複素変数zのn乗べきを単純にstar積に置き換えると発散級数となりstar積変形は得られない。そこで、変形パラメータの動く範囲が複素半平面に制限すると急減少となるstar指数関数を利用し1/(1+z)のstar積変形を構成しその原始関数として対数関数のstar積変形を与えることができた。この関数の解析関数としての性質を明らかにし、元の対数関数との関係を調べることは大変に興味深い問題であり、一般の非可換なstar積変形を研究する上で重要な手がかりを与えると期待される。この研究と並行して非可換変形の応用として具体的な物理モデルに対する簡約の問題を調べた。MICケプラー問題はU(1)主束の量子化として詳しく調べられているがこれをstar積を用いて再構成する試みである。通常のモイアル積などを用いて簡約を強引に行うと数学的、代数的には系が与えられることになるが実際の表示は複雑であった。これに対し前述の相互変換を適用して正規表示で考えることにより、簡約系の固有値のstar積による計算、量子化された系の発展作用素などの計算に応用するための研究を行い基本的な関係式を得た。これをもとに研究を進めMICケプラー問題に対する諸量の計算を行っていく。これらの研究により、変形量子化がより明確で具体的になると期待している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1変数関数のstar積変形を調べることによりstar指数関数の持つ、star積変形で生じる発散べき級数を正則化するという働きがわかった。1変数に限らず多変数の場合の非可換な変形においてstar指数関数を基本的な構成要素としてきたが、その一つの意味が明確になったと言う点において研究は順調に進んでいると思われる。海外で行ってきた国際研究集会についてコロナ禍および国際情勢の影響により困難が生じ、国際交流・情報交換に関しては軽微な遅れがあった。これに関しては次のとおりである。 予定していた国際研究集会がコロナ禍等の国際的な状況により開催が困難で当該年度の開催を見送った。論文集は雑誌という形で発行を続け参加者予定者たちはこの雑誌に論文を投稿し査読ののちに掲載するという形で発表することにした。現在は環境も整い以前通り国際研究集会を開催できるので、これからはこの研究集会などを通じて予定通りに国内外の研究者達と情報を交換しなが国際交流・国際共同研究を行えると思われる。また、本研究計画とも関わりがありポーランドで行われている研究集会が北東国境沿いにあることから場所を移動し、ビアリストク大学構内でやや規模を縮小して行われた。これに、オンラインでの参加という形で研究情報のやり取りを行ったが、これからは以前と同様に行うことができることに加えてオンラインでの参加・発表も可能とするとのことである。この意味で国際交流に関しやや遅れが生じたがこの遅れは今後に回復が容易であり、軽微なものであると評価できる。 以上から、研究自体は順調に進展しているが国際交流・情報の交換という意味で若干の遅れが生じたがこれは軽微なもので回復が可能である、という意味で概ね順調に推進しているとの判断をした。
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今後の研究の推進方策 |
1変数関数のstar積変形により得られたいくつかの具体的な関数についてその解析的な性質および成立する関数等式などを調べる。1変数に対する研究で得られた知見を多変数関数の非可換および可換star積変形に適用して解析関数を構成し、その性質を調べる。star指数関数に対し発散級数の正則化を与える働きがあることがわかったがこの視点から相互変換、表示変形を捉え直しその性質を調べる。一つの方向としてstar積代数の関数などへの作用およびその表現についても研究を試みる。また、前年度から引き続きstar積代数を具体的な物理モデルに応用する研究も並行して行いたい。コロナ禍および国際情勢の影響により当該年度の開催を見送った、あるいは開催場所を変更して規模を縮小して行った等の国外の研究会がこれからは平常に戻り開催されることさらにオンラインの利用ができるようになり以前より利便性が増した等のことで、国際交流・共同研究に関し復活・より活発化の兆しを見せている。その流れに沿って論文発表・講演発表も積極的に行いたいと考えている。さらに国内においても当研究計画と関連の深い研究者達との共同の研究会・セミナー等を通じてより活発に情報交換を行い当研究計画の大きなテーマの一つである変形量子化に関する研究の発展および若手の育成等を通じて、当研究をさらに推進していきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたブルガリアでの国際研究集会がコロナ禍等の国際情勢にあって開催できず、代わりに毎回出版していた論文集をブルガリアの研究機関発行の雑誌に切り替え、当該研究集会参加予定者達から論文を投稿してもらい査読ののち掲載することで研究発表・情報共有に変えた。それに伴い、参加するための交通費および論文集印刷費等が未使用となったためである。現在は情勢が落ち着き環境も整い、これからは以前と同様にそしてオンラインも併用し開催することになった。そのための費用として使用することおよび、海外との研究者との国際交流・国内研究者との交流および情報収集・共有そして若手研究者の育成等を活発化するつもりでおり、そのための交通費・通信費・謝金等に使用する計画である。これらを通して当研究計画をさらに発展推進していきたいと考えている。
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