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2023 年度 実施状況報告書

非孤立特異点変形族の代数解析と計算複素解析アルゴリズム

研究課題

研究課題/領域番号 22K03334
研究機関新潟大学

研究代表者

田島 慎一  新潟大学, 自然科学系, フェロー (70155076)

研究分担者 小原 功任  金沢大学, 数物科学系, 教授 (00313635)
鍋島 克輔  東京理科大学, 理学部第一部応用数学科, 准教授 (00572629)
渋田 敬史  九州産業大学, 理工学部, 准教授 (40648200)
梅田 陽子  北海道大学, 理学研究院, 准教授 (90606386)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2027-03-31
キーワード特異点 / 代数解析 / 複素解析 / ホロノミーD-加群 / local cohomology / ネター作用素
研究実績の概要

代数解析の理論に基づくことで, 特異点の複素解析的諸性質を研究している。特異点論では様々な不変量が重要な役割を果たすが、複素解析的な不変量を求める事は一般には困難であることが多い。そのため、特異点の解析を展開するためには複素解析的不変量を実際に求めるための計算法を確立することが必要とされている。そこで本研究では、多項式環や収束冪級数環におけるイデアルを考察し重要な解析的不変量の計算アルゴリズムの研究・開発を行っている。
孤立していないような特異点を持つ超曲面の解析においては、ホロノミーD-加群と呼ばれる偏微分方程式系を用いることが非常に有効である。先行研究により、s-parametric annihilatorと呼ばれるイデアルに対しcomprehensiveグレブナ系の理論等を適応することで、特異点のb-関数の根に付随するホロノミーD-加群を定めるイデアルのグレブナ基底を求めることが出来る。しかしこのようにして得られるグレブナ基底は非可換な偏微分作用素環のイデアルにたいするグレブナ基底であり、沢山の非常に複雑な偏微分作用素からなるため、これらを用いて偏微分方程式系としての構造を調べることは極めて困難である。本研究では、準素イデアルが定めるlocal cohomologyを複素解析の対象として扱うことで, ホロノミーD-加群の構造を解析する新たな研究手法を提唱している
D. Siersma, T. de Jongらが複素1次元の直線を特異点集合として持つ超曲面に関し、微分位相幾何的な方法を用いた先駆的な研究を行っている。本研究では、ホロノミーD-加群の解析を行うことでこれら典型的な特異点にたいし, vertical monodromyやvanishing cycleの研究を行っている。
特異点変形族に関し、付随するホロノミーD-加群のパラメータ依存性の研究を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

(1)特異点論では、特異点集合に対し横断的な超平面による切断を用いることで定義されるいわゆるBertini型の不変量が多く知られている。イデアルが変形パラメータを含む場合、このようなBeritini型不変量を求めることは困難であると見做されていた。本研究によりBertini型不変量のパラメータ依存性を求める計算法の枠組みを得た。これにより、local Euler obstructionやChern-Schwartz-MacPherson classのパラメータ依存性を求める計算アルゴリズムを構成することができた。
(2)孤立していないような特異点を持つ超曲面の特異点解析では、準素イデアルが定めるlocal cohomologyをWhiteney stratificationのstratumに台をもつ対象として複素解析的に理解することが重要である。2023年度の研究により、イデアルに対する極大独立集合の概念を用いることで、local cohomologyに対しネター作用素の概念を導入することにより、local cohomologyを複素解析の対象として取り扱うことが可能となる事を明らかにした。イデアルの準素イデアル分解が与えられていなくても、準素イデアルが孤立成分である場合はそのassociated primeが与えらていればイデアルの生成元と孤立素イデアルの情報から準素いであるのネター作用をを求めることが出来ることを証明した。準素イデアルが埋没因子である場合は、ネター作用素を直接求めることは出来ないが、準素イデアル分解の古典的な計算法のアイデアを適用することで、対応するネター作用素を求めるアルゴリズムを設計できる。これらの計算アルゴリズムをプログラム化し数式処理システムに
実装した。これにより、非孤立特異点を持つ超曲面に付随するホロノミーD-加群の代数解析の展開が可能となった。

今後の研究の推進方策

研究代表者と研究分担者が密に研究連絡、研究討議を行いながら共同して本研究を行う。研究に必要なアルゴリズムの考案、試作、プログラムの改良を共同で行い、計算アルゴリズムの開発を行う。これらのアルゴリズムを用いて様々な計算実験を行い、当該分野の専門家との研究討議を踏まえ、本研究を遂行する。
(1)ネター作用素の概念に基づくことで、一般次元の準素イデアルに付随するlocal cohomologuの研究をすすめる。準素イデアルが孤立成分である場合はその極大独立集合を用いた零次元化を施すことでlocal cohomologyに対するネター作用素を求めることができる。準素イデアルが埋没因子である場合に注目し、そのassociated primeの情報からネター作用素を求める計算法を研究する。これらネター作用素を積極的に用いることで孤立していない特異点に付随するホロノミーD-加群の構造を求める計算法の研究を進める。
(2)典型的な非孤立特異点を持つ超曲面に対し(1)で得た計算法を適用し、どのようなホロノミーD-加群がそれらに付随しているか実際に求める。ホロノミーD-加群の特性多様体が定めるWhitney stratificationやmonodromy構造、D. Masseyが導入したLe cycleとの関係を明らかにし特異点の複素解析を展開する。
(2)開発したプログラムを用いて非孤立特異点族に付随するホロノミーD-加群の研究を行い, 特異点変形族に対するWhitney equisingularityの研究をすすめる。
(3)ホロノミーD-加群を用いることで, 写像の特異点の研究を行う。特に, D. Mondらの研究結果や写像に対するpolar varietyやvanicing cycleに関する T. Gaffneyらの研究成果等との関連を調べる。

次年度使用額が生じた理由

トルコへ海外出張したが, 滞在費の一部を招待側である先方で負担して貰えた。ポーランドへの海外出張の費用はそのほとんどの経費を共同研究者の研究費から支払ってもらえた。国内で開催された研究集会への出張旅費も多くの場合, 先方負担をお願いすることが出来た。

  • 研究成果

    (22件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (3件) (うちオープンアクセス 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)

  • [雑誌論文] 正次元イデアルのネター作用素の計算と特異点2023

    • 著者名/発表者名
      鍋島克輔、田島慎一
    • 雑誌名

      京都大学数理解析研究所講究録

      巻: 2255 ページ: 75-87

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 多項式函数のbifurcation setの計算法I2023

    • 著者名/発表者名
      田島慎一、鍋島克輔
    • 雑誌名

      京都大学数理解析研究所講究録

      巻: 2255 ページ: 88-95

  • [雑誌論文] Effective algorithm for computing Noetherian operators of positive dimensional ideals2023

    • 著者名/発表者名
      K. Nabeshima and S. Tajima
    • 雑誌名

      Lecture Notes in Computer Scineces

      巻: 14139 ページ: 272-291

    • DOI

      10.1007/978-3-031-41724-5_15

    • 査読あり
  • [学会発表] 非孤立特異点を持つ超曲面とホロノミーD-加群, ネター作用素とLagrangien cycles2024

    • 著者名/発表者名
      田島慎一
    • 学会等名
      接触構造, 特異点, 微分方程式及びその周辺, 金沢
  • [学会発表] 最小消去多項式を用いたJordan細胞の構造の効率的な計算2024

    • 著者名/発表者名
      田島慎一, 小原功任, 照井章
    • 学会等名
      日本数式処理学会合同分科会
  • [学会発表] 非孤立特異点をもつ超曲面に付随するホロノミーD-加群2024

    • 著者名/発表者名
      梅田陽子, 田島慎一
    • 学会等名
      代数解析日大研究集会
  • [学会発表] Jordan鎖の構造の厳密で効率的な計算2024

    • 著者名/発表者名
      田島慎一, 小原功任, 照井章
    • 学会等名
      日本数学会代数学分科会, 大阪公立大学
  • [学会発表] Local cohomologyのネター作用素と準素イデアル分解2024

    • 著者名/発表者名
      田島慎一
    • 学会等名
      Risa/Asir Conference 2024 石川県しいのき迎賓館
  • [学会発表] 最小消去多項式を用いたJordan細胞の構造の効率的な計算2024

    • 著者名/発表者名
      田島慎一, 小原功任, 照井章
    • 学会等名
      Risa/Asir Conference 2024 石川県しいのき迎賓館
  • [学会発表] Holonomic D-modules and non-isolated hypersurface singularities2023

    • 著者名/発表者名
      S. Tajima
    • 学会等名
      Dual Perspectine Meetings, Bogazici Univ.
    • 招待講演
  • [学会発表] Introduction to D-modules and non-isolated hypersurface singularities2023

    • 著者名/発表者名
      S. Tajima
    • 学会等名
      Colloquium in Math. Galatasaray Univ.
    • 招待講演
  • [学会発表] 多項式函数のbifurcation setとtameness2023

    • 著者名/発表者名
      田島慎一
    • 学会等名
      金沢トポロジーセミナー, 金沢大学
  • [学会発表] Prmary decomposition via algebraic local cohomology with tag variables2023

    • 著者名/発表者名
      K. Nabeshima and S. Tajima
    • 学会等名
      Aplications of Computer Algebra 2023
    • 国際学会
  • [学会発表] Testing tameness of a complex polynomial map via comprehensive Groebner systems2023

    • 著者名/発表者名
      S. Tajima and K. Nabeshima
    • 学会等名
      Aplications of Computer Algebra 2023
    • 国際学会
  • [学会発表] Effective algorithm for computing Noetherian operators of positive dimensional ideals2023

    • 著者名/発表者名
      K. Nabeshima and S. Tajima
    • 学会等名
      Computer Algebra in Scinetific Computating, Havana
    • 国際学会
  • [学会発表] 多項式函数のtame性の判定--包括的グレブナ-基底系の利用--2023

    • 著者名/発表者名
      田島慎一、鍋島克輔
    • 学会等名
      日本数学会函数論分科会, 東北大学
  • [学会発表] A new look at Yano-Kato method for computing s-parametric annihilators2023

    • 著者名/発表者名
      鍋島克輔, 田島慎一
    • 学会等名
      日本数学会函数論分科会, 東北大学
  • [学会発表] 非孤立特異点を持つ超曲面とホロノミーD-加群2023

    • 著者名/発表者名
      田島慎一
    • 学会等名
      北海道大学代数解析セミナー
  • [学会発表] 非孤立特異点を持つ超曲面, ホロノミーD-加群とネター作用素アルゴリズム2023

    • 著者名/発表者名
      田島慎一
    • 学会等名
      トポロジーとコンピュータ 2023 慶應義塾大学
  • [学会発表] 多項式函数のbifurcation setの計算II2023

    • 著者名/発表者名
      田島慎一, 鍋島克輔
    • 学会等名
      特異点論展開, 京都大学数理解析研究所
  • [学会発表] 最小消去多項式を用いたJordan細胞の構造の効率的な計算2023

    • 著者名/発表者名
      田島慎一, 小原功任, 照井章
    • 学会等名
      Computer Algebra, Foundation and Applications, 京都大学数理解析研究所
  • [学会発表] Local cohomologyに対するネター作用素とホロノミーD-加群2023

    • 著者名/発表者名
      田島慎一
    • 学会等名
      Computer Algebra, Foundation and Applications, 京都大学数理解析研究所

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公開日: 2024-12-25  

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