研究課題/領域番号 |
22K03345
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
天羽 隆史 福岡大学, 理学部, 准教授 (10737539)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 制御型 Loewner--Kufarev 方程式 / 2D Shape / 繰り込み / KL divergence / 変分推論 |
研究実績の概要 |
P. Malliavin の正準拡散過程はその定義からある種の普遍類を成すが、これを制御型 Loewner--Kufarev 方程式として記述したときに KPZ 方程式のような確率偏微分方程式により記述されるのではないかと予想している。これは本研究のテーマの一つである「正準拡散過程がどのような確率モデルの普遍類となるのか」に対する仮説の一つである。そこで制御型 Loewner--Kufarev 方程式の数値解をプロットすることから様子を窺うと、ある種の繰り込みの下でやはり放射状 KPZ 方程式の解のような振る舞いを確認できた。またこの実験の過程で一つ発見があった。
また繰り込み付き確率モデルの設計について研究を進めた。画像処理と繋がりのある繰り込みを考えることにより、確率空間の二次元空間上での連続分解が構成できると確信が得られるところまで研究を進展させることができた。
統計学の指導原理とも言える Kullback--Leibler divergence 最小化に基づき新たな変分推論の方法を考案した。具体的には、まず設定した統計モデルに対して真の分布を推定する手続きを一つ固定し、この推定分布に対する真の分布の Kullback--Leibler divergence の第一・第二変分公式を導出した。対応する Euler--Lagrange 方程式を数値的に解くために E. B. Vinberg の等質凸錐理論を基に文脈にマッチした Newton--Raphson 法を開発した。この過程で「Kullback--Leibler divergence は確率単体上の自明な (0,∞)-主ファイバー束のゲージ(変換)である」という描像が得られた。これが示す「真の分布を想定することはこのファイバー束においてゲージ固定を行うことに他ならない」の観点は、統計学の問題意識に自然にマッチしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時に提出した本研究の「研究目的・研究方法」に従い、予定したほぼすべてのトピックについて満遍なく取り組めているように思う。研究費交付後の初年度に購入を考えていた計算機については、半導体不足による価格高騰に見舞われた時分であったため次年度以降に購入を見送った。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は繰り込み付き確率モデルの研究について、設計段階から数学的構成へと議論の舞台を移したいと考えている。またこれに付随する von Neumann 環の構成について考える。
また未だにブラックボックスとされるニューラルネットワークの機能について少しでも明らかにするため、まずは Bernstein 多項式のアイデアに基づくネットワークを構成し、その学習過程のダイナミクスについて詳細に研究することを考えている。過学習とよばれる現象について数学的に満足な説明を与える研究は未だに無いようであるが、例えばこの特定のネットワークについてなら何か証明できないかを考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究費交付後の初年度に購入を考えていた計算機については、半導体不足による価格高騰に見舞われた時分であったため次年度以降に購入を見送った。
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