研究課題/領域番号 |
22K03351
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中島 誠 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 准教授 (60635902)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | Edwards模型 / 確率量子化 / Dirichlet形式 |
研究実績の概要 |
高分子模型の一種であるEdwards模型の研究を行った. 鎖状の高分子の形状は理想的にはランダムウォークまたはブラウン運動のような形になるが, 異なる分子(モノマー)は重ならないという物理的な制約など厳密には分子間の相互作用が生じるはずである. このような相互作用を考慮して定義した模型がEdwards模型である. この模型は自己交差局所時間と呼ばれる量を用いて相互作用を記述するが, ブラウン運動の場合, 空間次元が2次以上の場合には自己交差局所時間は厳密には定義できない. しかし様々な繰り込みを用いることによりEdwards模型を定義する確率測度(Edwards測度)は2,3次元の場合にも構成できている. 4次以上では自己交差がないため考えない. 2023年度は3次元Edwards測度の研究を行った. 3次元Edwards測度は相互作用を表すパラメータ(λ>0)ごとに定義されるが, これらはブラウン運動を定義するWiener測度と特異になっていることが知られている. この測度を定常分布とするマルコフ過程の構成をEdwards測度に対するquasi-invarianceと呼ばれる性質を調べることで達成した. これは確率量子化と呼ばれる場の量子論で使われる理論の一種である. Quasi-invarianceを示すことにより特異性から非自明であったEdwards測度の台がWiener空間と一致することもわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
3次元Edwards模型の研究は, 低次元に比べて非常に難しい点が多い. それは自己交差局所時間の存在の有無であったり, Edwards測度がWiener測度と特異であるといった点から生じるものである. これらはブラウン運動の非再帰性とも関連しており自己交差するのは短時間の間でることがわかる. そのため3次元Edwards模型の研究は20年以上なされていなかった. このような問題を解決した点は大きい. また未解決の問題も多く残っている.
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今後の研究の推進方策 |
3次元Edwards模型における未解決問題のいくつかに取り組んでいく. 例えば, Edwards測度の構成を別の近似により構成する方法の考察と今回考えた確率測度との対応についてである. また確率量子化をDirichlet形式を用いて行ったが, 他にもSPDEを用いた構成なども考えられる. まずはこれらを解決していく. また2次元ディレクティドポリマーの研究についても引き続き行っていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画上2023年度は海外で実施される研究集会へ参加する予定を立てることができず, 外国人研究者の招聘を考えていた. 当初予定していたより招聘するための費用が安く済んだため助成金を残すことになった. 2024年度はすでに何件か海外の研究集会へ出席する予定である. また必要ならば2024年度も開催する研究集会で参加者への旅費の補助に使うことも考えている.
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