研究課題/領域番号 |
22K03357
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
半田 賢司 佐賀大学, 理工学部, 教授 (10238214)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | Poisson-Dirichlet分布 / 点過程 / 相関関数 / 確率母汎関数 / 可逆分布 |
研究実績の概要 |
研究の端緒として,凝結・分裂現象を記述するマルコフ過程モデルの中で平衡状態が同定されている一つのモデルの数学的構造を深く調べた.このモデルは,Bertoin [Combinatorics, Probability and Computing, 2008] により発見されたものであり,その平衡状態(可逆分布)は2パラメータPoisson-Dirichlet分布として知られている.Bertoinによる可逆性の証明は,各自然数nごとに,離散版モデルと言えるnの整数分割の空間上のマルコフ過程についていわゆる詳細釣合条件が成り立つことを明示的に確認することでなされた. 我々は,そのような離散版や有限次元射影を介しないという意味において,より直接的にその可逆性を示すことができないか議論を重ねた.その結果,2パラメータPoisson-Dirichlet点過程の汎関数解析を通じた方法が利用可能であることが判明した.2パラメータPoisson-Dirichlet点過程とは,2パラメータPoisson-Dirichlet分布に従う無限次元単体のランダムな要素を正の実軸上の点過程として記述したものであり,その相関関数や確率母汎関数による特徴づけは研究代表者により2009年に得られていた.ここではさらに,点過程としてのPalm分布公式を確立することで進展がなされた.加えて,上述のBertoinの可逆モデルで分裂作用素を規定するのに用いられる2パラメータPoisson-Dirichlet分布の無限測度への拡張版について,拡張された確率母汎関数による特徴づけも得られ,それも援用しての結果となっている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
論文草稿がまだ完成していない.これは,学術的見地から同時に盛り込んでおいた方が良いと思われる補助的または関連する結果が多岐にわたっているためである.
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今後の研究の推進方策 |
Bertoinの可逆モデルにおいては,2パラメータPoisson-Dirichlet分布のパラメータ(α,θ)でαが正の場合に限定されたもののみが可逆分布となる.実はそれよりも前に,α=0の場合のみに限定したPoisson-Dirichlet分布を可逆分布として持つ凝結・分裂過程がMayer-Wolf, Zeitouni, Zerner [Electron. J. Probab., 2002] によって議論されていた.そこで,これら2つのモデルの関連性を無限次元汎関数解析の視点で考察することは大変興味深い.その試みは,我々の方法の有効性を試す良い機会ともなり得ると考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
対面行事の開催が多くなった年度の後半において,学内では教育義務・管理業務が繁忙を極め,出張等の機会が容易に得られなかったためである.元々請求していた助成金と合わせた使用計画としては,申請時の計画に加え,論文掲載料(APC)負担のための経費の増加分を賄うため,及び学内で利用する数学関連データベースの利用料負担へと充てる考えである.
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