研究実績の概要 |
Bertoin [Combinatorics, Probability and Computing, 2008] の可逆な凝結・分裂過程モデルにおいては,2パラメータPoisson-Dirichlet分布のパラメータ(α,θ)でαが正の場合に限定されたもののみが可逆分布となる.実はそれよりも前に,α=0の場合のみに限定したPoisson-Dirichlet分布を可逆分布として持つ凝結・分裂過程がMayer-Wolf, Zeitouni, Zerner [Electron. J. Probab., 2002] によって議論されていた.そこで,これら2つのモデルの関連性を無限次元汎関数解析の視点で考察した. まずは,Bertoinの可逆な凝結・分裂過程モデルにおいて正のαの値を0に近づける極限において何が起こるかを,適当な汎関数(生成作用素に相当)の漸近挙動を介して見た所,適切なスケール極限の下で,Mayer-Wolfらによって議論されたモデルの対応物へは収束せず,極限は別の表示をとることが判明した. そこで,Bertoinの可逆な凝結・分裂過程モデルにどのような修正を施せば,同様のスケール極限の下でMayer-Wolfらによって議論されたモデルの生成作用素が導かれるかを議論した.その結果,Bertoinのモデルにおける分裂のジャンプレートを各クラスターサイズに依存したものへと変えるとともに,凝結の操作においても各クラスターサイズに依存したものへと変えることが適切な修正となる,といった結果が得られた.この概要については,3月に開催された佐賀大学ワークショップにおいて報告を行った.
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