• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2022 年度 実施状況報告書

双曲型効果を伴う粘性流方程式系の初期値境界値問題の数学解析

研究課題

研究課題/領域番号 22K03374
研究機関大阪大学

研究代表者

小林 孝行  大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 教授 (50272133)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2026-03-31
キーワードNavier Stokes 方程式 / 2相流相転移モデル / 双曲型 Navier-Stokes 方程式 / 圧縮性 Navier Stokes 方程式 / 消散項付波動方程式
研究実績の概要

本研究では、双曲型効果を伴う粘性流体方程式系: 圧縮性 Navier-Stokes-Korteweg 方程式、非圧縮性双曲型 Navier-Stokes 方程式に焦点を当て、物理的に重要な外部領域や摂動半空間における初期値境界値問題を考察することが目的である。圧縮性 Navier-Stokes-Korteweg 方程式は、 蒸気と液体の2相流で、相転移境界が薄い遷移ゾーンとして見なされるモデル方程式として提唱され、近年、定数平衡状態の安定性に関する初期値問題が多くの数学者によって研究されている。 双曲型 Navier-Stokes 方程式は、 斉次非圧縮性 Maxwell 流体のモデル方程式として提唱されており、 初期値問題の場合に、小さい初期値に対する時間大域解の一意存在が示されている。本研究では、圧縮性 Navier-Stokes-Korteweg 方程式で、外部領域における初期値境界値問題を考察し、 定数平衡状態の安定性解析における解の拡散波動現象と圧力臨界条件を、 双曲型 Navier-Stokes 方程式では、 外部領域と摂動半空間における初期値境界値問題を研究することが目的である。
圧縮性 Navier-Stokes-Korteweg 方程式では、有界領域と外部領域の初期値境界値問題を考察し、そのレゾルベント評価と R-有界性を得ることに成功した。また、有界領域の場合はポワンカレ不等式とコーン不等式が成り立つため、定数平衡状態において圧力項の一階微分が負であっても、ある条件下では、音速がゼロの場合も含めて、レゾルベント評価と R-有界性が成り立つことがわかった。結果として、有界領域における初期値境界値問題では、最大正則性を示すことに成功し、解は指数安定であることを示した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

圧縮性 Navier-Stokes-Korteweg 方程式では、圧力は密度場に関して非単調関数である。定数平衡状態において、圧力の密度に関する一階微分が負の場合、初期値問題では線形不安定となるため、圧力の密度に関する一階微分が零の場合が、外部領域の初期値境界値問題では安定性を示すための臨界条件と予想される。この圧力臨界を含めた外部領域における初期値境界値問題に関するレゾルベント問題では、高周波部分のレゾルベント評価及び R-有界性を示すことに成功した。そのため、線形化方程式より得られる C0 半群の解析性と最大正則性に関する評価を得ることができた。また、有界領域における初期値境界値問題では、ポワンカレ不等式とコーン不等式が成り立つため、定数平衡状態における圧力項の一階微分が負であっても、ある条件下では、音速がゼロの場合も含めて、レゾルベント評価と R-有界性が成り立つことがわかった。結果として、有界領域の場合では、最大正則性を示し、解は指数安定であることを示すことに成功した。外部領域と摂動半空間における非圧縮性双曲型 Navier-Stokes 方程式では、線形化方程式の解の局所エネルギー減衰評価を得ることにすでに成功しており、現在では非線形方程式の時間局所解の存在に着手している。その第一歩として、半空間における初期値境界値問題に着手し、時間局所解の一意存在を示すための強消散付き線形方化程式の解のアプリオリ評価を得ることができた。

今後の研究の推進方策

圧縮性 Naver-Stokes 方程式と非圧縮性双曲型 Navier-Stokes 方程式の解の構造において、前者の線形近似は非圧縮性 Stokes 方程式と線形粘性弾性体方程式であり、 後者はソレノイダルベクトル場における消散項付波動方程式である。拡散項と波動項の相互作用が異なるため、それぞれの方程式系の解の拡散現象と波動現象を知るために、解の時間無限における漸近挙動を解析する。
(1) 外部領域および摂動半空間における非圧縮性双曲型 Navier-Stokes 方程式の初期値境界値問題では、非線形問題を解く第一歩として、時間局所解の存在証明に着手する。次に、すでに得られている解の局所エネルギー減衰評価と全空間の解の評価を用いて解の Lp-Lq 評価を導き、非線形問題の時間大域解の存在と解の減衰評価を示す。
(2) 圧縮性 Navier-Stokes-Korteweg 方程式は、二相流体の拡散界面モデルであり、その相転移を記述するためには圧力項は非単調増加関数でなければならない。したがって、音速がゼロの場合を含めて考察し、外部領域における圧縮性 Navier-Stokes-Korteweg 方程式の初期値境界値問題において、まず線形化方程式の解の局所エネルギー評価を導く。その際、拡散項や拡散波動項の抽出も行い,全空間の場合で得られている拡散項や拡散波動項の評価と合わせてcutoff テクニックを用い、線形化方程式の解の Lp-Lq 評価を導く。非線形問題に対しては、得られた Lp-Lq 評価と解の最大正則性を用いて時間大域解の存在と解の減衰評価を示す。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルス対策のため、国際研究集会への参加を控え、渡航も中止したことと、国内で開催予定であった国際研究集会等もメディア開催になったため、当初予定した成果発表および研究打ち合わせができず当該年度の所要額に大幅な残金が生した。次年度は新型コロナウイルスが終息または緩和され次第、延期になった国内および国際研究集会等に参加、研究成果発表のための講演を行い、研究打ち合わせを行う。そのため、次年度使用額は、主に旅費に用いる。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Resolvent estimates for a compressible fluid model of Korteweg type and their application2022

    • 著者名/発表者名
      T. Kobayashi, M. Murata and H. Saito
    • 雑誌名

      J. Math. Fluid Mech.

      巻: 24 ページ: 42 pages

    • DOI

      10.1007/s00021-021-00646-3

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Resolvent problems for a compressible fluid model of Korteweg type in bounded domains2023

    • 著者名/発表者名
      T. Kobayashi
    • 学会等名
      北九州における偏微分方程式研究集会

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi