研究課題/領域番号 |
22K03380
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
田中 和永 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (20188288)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 変分問題 / 非局所問題 / 特異摂動問題 / 変形理論 |
研究実績の概要 |
特異摂動問題に対応する変形理論の整備を行った.特異摂動問題は非線形シュレディンガー方程式に代表される局所問題に対してポテンシャル V(x) の極小点に凝集する解を中心に研究が行われてきた.Lyapunov-Schmidt 法が適用可能な非退化な特別な場合を除けば,ポテンシャルの極大点,鞍点に凝集する解の変分的研究は少なく,その手法も大変複雑であった (Byeon 氏と私の共同研究 Eur. Math. J 2013 等).特に Berestycki-Lions に代表される一般的な条件下でも適用可能な deformation flow は標準的な deformation, R^N でのシフト,無限遠での最小化という 3つの性格の異なる flow の iteration というものであった.ここではこの変形理論の見直しから始め,証明を大幅に簡略化し,iteration を経ずに deformation を構成した. ここでは空間でのシフトが標準的な変形理論には含まれない点に注意し,関数空間 H^1 と R^N の直積空間に拡張された汎関数に変形理論を展開している.先に Cingolani 氏と共に開発した tail minimizing のアイデアも取り入れている.さらに特筆すべき性質として,今回開発した deformation flow は deformation の課程で関数の形状(ピーク)をある程度保つという性質をもち,特異摂動解の存在証明に適するものである. 局所問題のみならずここでの方法は非線形 Choquard 方程式等の非局所問題に対しても有効であり,この方法を用いることによりポテンシャル V(x) の極大点,Moutain pass により特徴付けられた鞍点に凝集する特異摂動解の存在を Cingolani 氏と共に示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特異摂動問題に対する変形理論が行われ,非常にテクニカルであるが,使いやすい framework を構築することができた.分数べきをもつ非線形楕円型方程式,L^2 制限問題への応用も期待できる.
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今後の研究の推進方策 |
長い間有効なアプローチがなかった L2 制限下での特異摂動問題へ今回開発された手法の適用を目指す.局所問題,非局所問題を共に扱う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響がまだあり, 出張等を控えることが求められていた. また研究代表者本人のコロナ感染もあった. 本年度はコロナ禍の影響はなくなり, 海外出張等もできるようになったので, 積極的に研究に邁進したい.
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