研究課題/領域番号 |
22K03396
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研究機関 | 沖縄科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
柳 青 沖縄科学技術大学院大学, 幾何学的偏微分方程式ユニット, 准教授 (70753771)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 距離空間 / 粘性解 / ハミルトン・ヤコビ方程式 / モンジュ解 / アイコナール / 最適制御 / 長時間挙動 |
研究実績の概要 |
距離空間上のハミルトン・ヤコビ方程式について研究した.特に,テスト関数は使用せず,距離空間内の各点で直接定義されるモンジュ解による手法のさらなる発展を目標として研究を行った.我々の先行研究で確立したアイコナール方程式に対するモンジュ解の一意存在性の結果を一般のハミルトン・ヤコビ方程式まで拡張し,距離空間における粘性解について理解を深めた.主に2つのタイプの方程式を研究対象として解析を行なった.一つは時間依存のハミルトン・ヤコビ方程式可解性理論に関する研究である.適切な方程式の変換により,時空間を一つの距離空間に統一して,それに基づいたモンジュ解の定義を考案した.テスト関数を使わない各点での定義であるため,一般の距離空間における不連続性をもつ一階完全非線形発展方程式への応用も可能と思われる.もう一つの課題は,非凸ハミルトン・ヤコビ方程式の定常問題に対する粘性解理論の見直しである.テスト関数の役割を解のスロープだけでどのように実現するかを様々な具体例から考察し,これまで提唱された距離空間上の粘性解の定義を簡易化した.従来の粘性解との同値性も失われないため,非凸ハミルトン・ヤコビ方程式に関する多くの未解決問題に取り組む新たな視点になると考えられる.
ハミルトン・ヤコビ方程式の関連課題として,ユークリッド空間において非局所的一階発展方程式についても研究を行った.従来のハミルトン・ヤコビ方程式の最適制御による粘性解の表現公式を非局所的方程式まで拡張できて,その方程式の解釈を用いて解の長時間挙動や特異性について結果を得られた.この研究成果をまとめた論文は現在投稿中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度の結果をさらに進展させ,距離空間におけるモンジュ解の概念をより一般的なハミルトン・ヤコビ方程式に拡張できて,新しい視点から一階完全非線形方程式の粘性解理論について理解を深めることができた.関連課題への応用も含め,新たな方向性を開拓することができた.本研究は予定通り進展し,順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は距離空間上のハミルトン・ヤコビ方程式について研究を深め,モンジュ解による手法をさらに発展させ,様々な解析問題への応用に取り組む予定である.まずは,現在進行中の時間依存の問題と非凸方程式に関する研究を完成させ,解の一意存在性のみならず,新たな枠組みで解の安定性についても考察してみたい.また,モンジュ解の観点から解の長時間挙動や特異性の伝播などについて解析を行い,従来の結果との関連を調べる.ユークリッド空間の場合と比較しながら,距離空間上の粘性解理論をさらに充実させたいと考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
開催予定のセミナーと研究集会が延期となったため,当初予定していた予算に余剰が発生した.次年度に国際研究集会を開催し,生じた残額を参加者の招聘旅費として使用する.また,研究に必要な資料を購入するための費用等としても使用する.
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