研究課題/領域番号 |
22K03397
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
磯邉 秀司 東北大学, データ駆動科学・AI教育研究センター, 准教授 (00344739)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 公開鍵暗号方式 / 証明可能安全性 / 非可換群 |
研究実績の概要 |
量子計算機の計算能力を考慮した暗号方式に関する研究は近年重要性を増してきているが、非可換代数構造上で定義される計算問題の複雑さを利用した暗号理論の研究はその流れの中の一つに位置付けられている。 本研究課題においても、自身の過去の研究課題において、非可換群上で定義される群論的計算問題の複雑さを利用した公開鍵暗号方式(秘匿通信方式)の一構成手法を提案、公表していたところであるが、そこで証明可能な安全性は、証明モデルは標準モデルではあったものの、理想的な安全性と考えられている選択暗号文攻撃に対する識別不可能性(IND-CCA)よりもやや劣る安全性であった。さらに、先行研究においては具体的な群の実装方法までは特定できていなかった。そこで、本年度の課題研究においては、既存の結果を理想的な安全性である IND-CCA を証明可能となるように発展させることを目的として研究を行なった。 その結果、ある種の半直積群構造を利用することで既存研究の問題点を解決し、共役問題の変種問題が計算量的に解決困難であることを仮定して、IND-CCA 安全性を標準モデルにおいて数学的に証明可能な公開鍵暗号方式の一般的な構成手法を与えることに成功した。この結果は数学的暗号理論分野の国際論文誌にてすでに公表済である(2023年3月公表。)本結果は、暗号方式としての実装効率は既存のものよりも落ちるが、標準モデルにおいて理想的な安全性証明が可能な方式としての意義を有している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現状では、本研究課題開始の時点において想定されていた進度に概ね合致した進捗状況になっている。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度において提案することができた安全な公開鍵暗号方式の一般的構成法については、具体的に当該目標を達成可能な群構造を特定できたこと、理想的な安全性を達成できたことは一つの成果ではあるものの、暗号方式として実装された際の効率性に関しては改善の余地が大きいことが課題として残っている。本年度において考案された構成手法が適用できる他の群構造を利用すれば実装効率を改善できる可能性はもちろんあるが、そのような構造の一般的な特徴づけなどについては未検討であり、現状ではアドホックに探していくしかない状況である。そこで、今後は一般論的な視点に立って、本年度の研究成果の再検討を行い、本結果の手法を適用できる群構造の特徴づけを探るとともに、手法そのものの洗練を図る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文掲載料が想定よりも半額程度の金額で抑えることができたこと、さらに購入予定物品(パーソナルPC)が令和4年度分については別途用意でき、購入を早める必要性が一時的に解消されたことによる。ただし、後者については継続使用できない物品であったため、令和5年度に購入予定である。
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