研究課題/領域番号 |
22K03408
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
宮部 賢志 明治大学, 理工学部, 専任准教授 (00583866)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | MLランダム性 / 計算可能ランダム性 / 計算近似可能実数 / Solovay次数 / Lipschitz連続関数 |
研究実績の概要 |
本研究では,計算近似可能実数(computably approximable real,略してc.a.実数)に対するSolovay次数構造の研究を進めた.c.a.実数とは,計算により近似可能な実数のことである.Solovay還元とは,2つの実数に対して近似可能性によって複雑さを比較する尺度である.前年度までの研究において,c.a.実数に対するSolovay還元がLipschitz連続関数や符号付き桁数表示を用いて特徴付けられることが明らかになった.これらの特徴付けは,c.a.実数に対するSolovay還元が自然な概念であることを意味しており,その重要性を示唆するものである. 左c.e.実数(left-c.e. real)に対するSolovay次数構造については,2000年代に盛んに研究が行われた.左c.e.実数とは,下からの近似列を持つc.a.実数のことである.特に,MLランダム性と最大元であることが同値になることが知られている.また関連してcomputably Lipschitz次数(cL次数)やrelative Kolmogorov次数(rK次数)などとの関連も研究されてきた.cLやrKは左c.e.実数に限らない2進無限列について定義される.そのため,c.a.実数に対するSolovay次数構造はこれらの次数構造と深い関係を持つことが予想される. c.a.実数に対するSolovay次数構造については,最大元が存在しないことが分かる.これは左c.e.実数の場合と対照的である.またc.a.実数に対するSolovay次数構造の極大元は,MLランダム性と計算可能ランダム性の間に位置する概念であることも分かる.極大元かどうかについては,MLランダム性や計算可能ランダム性の微分可能性による特徴付けの研究およびBarmpaliasとLewis-PyeおよびMillerらによる収束速度の研究と深い関連がある.微分可能性と収束速度は,実数の性質を解析する上で重要な概念であり,これらの研究はc.a.実数に対するSolovay次数構造の理解を深めるために不可欠である. 本研究はまだ進行中のものであり,今後さらなる発展が期待される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ランダムな実数の収束速度について,解析するための道具を開発し,また既存研究との関連が分かるようになってきた.このような新しい知見が得られており,順調に進展していると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
本年度得られた知見を元に,微分可能性や積分検定との関係を明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していた書籍の出版が遅れたため.また出張の都合がつけられなかったため. 繰り越した予算は,書籍の購入および出張旅費に当てる.
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備考 |
Laurent Bienvenuとの共同研究 https://www.labri.fr/perso/lbienvenu/
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